【11:寝顔】
ふと眩しさに瞼を焼かれて、小さくうめきながらもゆっくりと目を開く。
覚醒していない思考と、まだぼんやりとする視界の中に、柔らかな寝顔が見えて。
驚いて瞬きを繰り返し、今度はしっかりと目を開く。
暖かい胸に引き寄せられて、僕の頭の下には彼の腕。
今日もまた僕は、抱きしめられて眠っていたのだろうか。
少し視線を上げると、視界のすぐ傍に唇が映る。
ふと、無意識にそこへ触れるように手を伸ばした。
いつも全身に触れてくる、セフィリオの唇は思った以上に柔らかくて。
思わずくすくすと笑ってしまった。そうして、そっと口付ける。やっぱり柔らかい。
薄く開いたそこから、小さく漏れる寝息が僕の唇に伝わる。
起こしてはいけないと、慌てて離れようとした僕の身体を、彼の腕が引きとめた。
抱き寄せられた体から伝わる鼓動の音に、僕は擦り寄るように身を寄せ、もう一度瞼を閉じる。
朝日はもう顔を出したけれど。
もう少しこの腕の中で安堵していたいから。
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小さく身じろいだ気配で目が覚めた。
だけど、瞼は開かない。
未だ、深く眠っている振りを続ける。
オミは、意地っ張りだから。
こういう時にしか素直になってくれない。
眠っていると分かると、オミは色々と触れてくる。
瞼や頬、唇に。
我慢できなくなったのか、指と思われた感触の後柔らかいそれが続いた。
触れるだけの軽いキス。
思わず追いかけてしまいそうになる自分を宥めて。
腕の中から逃げ出そうとしたオミを引き寄せ抱きしめた。
眠っていると思っているのだろう。
素直に身を摺り寄せて、甘えた様子でもう一度瞼を閉じた。
空にはもう朝日が昇っているけれど、今日は少し寝坊しよう。
腕の中の暖かい存在を手放してしまいたくないから。
END