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一度はやってみたいシリーズ

Web拍手*お礼フリー小説(フリー期間は終了いたしました/謝)>>セフィリオ×オミ 2004/5/30 up

【22:空】






眩しい日差しが、瞳を焼いた。

「・・・暑」
流れる汗は止まる事も知らず、目に入って痛い。
トランの気候はほぼ変わらない。
けれど、こうやってたまに、とんでもなく暑い日が来たり、寒い日があったりする。
「暑いですねぇ。今日は、冷たいものがいいですね。何か食べたい物、ありますか?」
窓際で、パタパタと手を団扇代わりにしていた俺を見かねて、冷たい飲み物を出してくれながらグレミオが笑う。
ありがたくそれを受け取って、考えてみるが。
「残念・・・なんだか、食欲もないよ」
「食欲が無い?!そ、それは大変です!坊ちゃん風邪などは?!」
「・・・大丈夫だから」
この、過保護&心配性はいい加減卒業して欲しい。
身体こそ16歳時の未完成のままだけれど、そうそうひ弱にも出来ていない。
今年、俺は20になるんだぞ?グレミオは、絶対分かってないだろう。
溜息を付いて、ふと窓の外を見上げた。
空は青く高く、何処までも雲ひとつない快晴だ。
この空を見て・・・ふと、空色が似合う笑顔を思い出した。
いてもたってもいられなくて、俺は立ち上がる。
「んー。まだ日も高いし。・・・出かけてくる」
カタンとグラスを置いて部屋を出ようとした俺を、後からグレミオの声が呼び止めた。
「坊ちゃん!また、オミ君の所ですか?!」
「・・・『また』ってなんだよ?」
こっちはオミと会えないし、この暑さで苛々してるんだから。
「だって、・・・昨日の夜戻って来られたばかりでしょう?」
「・・・そうだっけ?」
もう随分オミと会っていない気がするんだけど。
グレミオが残念そうに言うのも、最もかも知れない。
・・・・最近家に居ないからな・・・俺。
「そうですよ!あんまりあちらに居られると・・・!」
心配してくれるのは良いんだけど。
もう子供じゃないんだから。大丈夫だって。
「・・・そうかもしれないけど、行って来る。あ、泊まって来るから」
「坊ちゃん〜!!」
泣いてるグレミオをほっといて、俺は旅支度をするために部屋へと戻った。


***


「やv」
「セフィリオ?!」
案の定、驚いた顔をして俺の顔を見つめているオミ。
珍しく、今日の執務は休みなんだって?
どうして、俺が居ない時にばかり休みを貰うんだ?
デュナン湖の辺で涼んでいたオミの正面に、腕を組んで立ちはだかる。
「え?で、でも、昨日・・・」
「ん?まぁ、そうなんだけど。・・・空見てたら、会いたくなってね」
手を伸ばせば、何のためらいもなく、握り返してきた。
そのまま腕を引いて、飛び込んできた身体を抱きしめる。
「暑い!セフィリオ!!」
「・・・・じゃあ、涼もうか」
「え?・・・ちょっと・・何する気でうわ?!」
オミの身体を思い切り、湖に投げ込んだ。
巨大な水柱が上がって、暫くすると、ぽこっと顔を出して・・・
「何するんですか!!?」
ほら、怒った。
オミの表情の中で、一番見慣れた顔だけれど。
「やっぱり、怒った顔も可愛いねv」
「な・・・っ?!」
もう、言葉を失ったように唖然とするオミの身体を、岸から抱き寄せて抱きしめる。
「んー冷たい」
「・・・自分が涼む為に、投げ込んだんですか」
「いや?オミが『暑い』って言ったから。気持ち良いでしょ?」
「・・・あのねぇ」
苦笑するオミの身体をもっと、強く抱きしめたら、いきなり腕を引かれた。
「・・・っ!?オミ・・・」
「あははは!」
もちろん、俺も上から下までずぶ濡れな訳で・・・。
「どうしようか。着替えなんてないんだけど・・・?」
「・・・泊まって行ったら良いじゃないですか」
「いいの?」
「・・・今更ですよ」
透明なデュナン湖の水は、真っ青に染まっている。
これは、空の色。
「・・・セフィリオ」
「・・・?」
「今日は、綺麗な空・・・ですよね」
「・・・そうだね」
抱きついていた腕がするりと離れて、オミは水に仰向けに浮かんで、囁く。

「セフィリオの目と同じ、色してるんだ」

「え?」

水が立てる音の所為で、その微かな声は聴こえなかったけれど。

「なんでも・・・ないですよ」

そのオミの笑顔が、見たかったそれだから、今は聞かないでいてあげる。
でも今日の夜は、覚悟してね?








END






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