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A*H

一度はやってみたいシリーズ

・・・まったり。(笑) セフィリオ×オミ 2004/06/06 up

【42:過去】






「オミの昔の話・・・?」

「知ってるんだったら、教えて欲しいと思ってね」



セフィリオが話し掛けた相手は、ナナミだ。
オミの部屋を出た扉の前で、ばったりと顔を合わせてから、なんとなく二人で話していたのだが。
「どうして、いきなりそんなことを?」
「・・・どうしてかな」
話題が途切れかけて、ふとナナミが目を逸らした瞬間に、ずっと気になっていた事がつい口から出てしまった。
本人が言いたがらないことを他人から聞くなんて、少し反則な気もするが。
もう口に出してしまった事だ。今更繕っても仕方がない。
知っていることだけでも良いと、セフィリオは笑いかけた。
「オミが、小さい頃・・は、ほんと、お人形みたい、でした」
「お人形?」
「とても綺麗なお人形。肌の色もわたし達とは違って、じいちゃんの壷みたいに透明で・・・」
確かに、オミの肌は都市同盟やハイランドの人間とは、肌色が違う。白く、透けるような肌・・・。
「・・・白磁の肌」
「あ、そう!白磁の壷、持ってたんです!」
ぽつりと口を開いたセフィリオに、ナナミが頷いて答える。
自分が思いつかなかった答えを出してもらえて、満足そうににこにこと。
セフィリオは小さく笑って、先を促した。
「あ、そうです。でも、凄くきれいでも・・・喋らなくて。表情は微かにしか変わらない。壊れたお人形でした」
悲しそうに、目を臥せるナナミに、セフィリオも目を細めた。
そんな表情には気付かず、ナナミの言葉は続く。
「初めは、喋れないのかと思いました。でも、数日後にはじいちゃんと、同じ日の夜には、わたしと」
口を利いてくれた。
「それからは、少し笑うようになって。困ったような笑い方が多かったけど、でも、わたしそれでも嬉しかった」
『姉』らしい表情で、ナナミは笑う。
今までは、ただ元気の良い娘だとしか思ってなかったけれど。
「・・・いい姉だね、ナナミは」
セフィリオの言葉に、小さく、けれど嬉しそうに笑った。
「でも。オミはまだ、わたしのことを『お姉ちゃん』って呼んでくれた事ないんですよ」
「・・・そうなの?」
こくんと頷いて、口を開く。
? 「家族とか、姉とか弟とか。・・・友達でさえも、オミはキャロで初めて見たんです」
「!」
「わたしは、両親をちゃんと覚えてる。・・・でも、オミはお母さんの顔さえ、知りません」
「・・・」
「だから、わたしはお姉ちゃんにも、お母さんにもなってあげたかった」
そして、友達にも。
「じいちゃんもわたしもオミも、血なんて繋がってないけど・・・大切な家族なんだって、教えたかったんです」
だから、あえてナナミはオミに、『姉』と呼ばせることを強要した事はない。
どこかが壊れてしまっていたオミを、姉の自分がしっかりして守ってあげるのだと、手を差し伸べたあの日から。



***



「・・・じゃあ、俺は初めての恋人な訳だ」
「は?・・・いきなり、何言ってるんですか?」
執務が終わったのか部屋に戻ってきたオミは、着替えていた手を止めて、セフィリオの言葉に怪訝な顔で聞き返した。
ベッドに腰を降ろしたまま、セフィリオは開いていた本をパタンと閉じる。
立ち上がって近付いて、半裸のままのオミを腕の中に抱き込んだ。
「ちょっ!?」
「こうやって、抱きしめてあげるのは・・・もう何回目だろうね?」
「・・・?」
暴れようとしたオミの頭を、自分の胸に抱き込んで、その動きを封じる。
いつになく真剣な様子のセフィリオの声音に、オミは叫ぼうとしていた口をつぐんだ。
「・・・ゴメン。何も知らない事がこんなにも罪だとは、気付かなかった」
「・・・何を・・?」
オミは、親愛以外の愛情を知らないと言った。
だから、それをそのままの意味で、ただ『恋愛を経験した事がない』という軽い意味に取っていた愚かさ。
他人から受ける慈愛でさえも、オミは知らなかったというのに。
「『抱く』事を『愛』だと呼ぶのは間違ってると思う・・・?」
「・・・・どうでしょう」
愛など無くても、男は相手を抱ける。ただ、欲望の処理のために。?
大人しく腕の中に納まっているオミの頬に、手を滑らせる。
気付いて、顔を上げたオミの唇を、柔らかく塞いだ。
「・・・っ」
触れ合わせるだけの、キス。
けれど、とても深い。
「・・・セフィリオ?」
「・・・いや、何でもない」
何度悔やんだだろう。
どうして、もっと早くにオミと出会えなかったのか。
幼いオミに強いられたその行為から、どうして守ってやれなかったのか。
セフィリオは小さく笑って返し、首を振る。
何でもないと首を振っても、オミには全てお見通しだ。
「まだ・・・気になりますか?」
「・・・独占欲が強いのも、苦しいよ。どうにもならない事だって、わかってるのにね」
「ん・・・」
苦笑して、オミは身じろぎした。
腕の中から逃げられてセフィリオは肩を竦めるが、突然強い力で引っ張られた。
「っ!」
バランスを崩して倒れ込んだ先は、柔らかいベッドの上。
スプリングが、受け止めたセフィリオの身体をぎしぎしと揺らす。
と、更に深くベッドが沈み込んだ。
「・・・オミ?」
二人分の体重がそこに集中したからだ。
オミは無言で、セフィリオの腰の上に跨る。そのまま、驚いた表情のセフィリオの唇を、自分の唇で塞ぐ。
言葉は、要らないと。・・・ただ、そう伝えるように。
「・・・っふ・・・」
セフィリオも、驚いていた目をゆっくりと閉じて・・・オミのキスを受け入れる。
オミの?手が、するすると器用に服を開いていくのを、ぼんやりと、肌で感じながら・・・。

「・・・過去なんて・・・」

互いの肌が触れ合う中で、そっと、オミが口を開いた。
「過去なんて・・・もう、どうにもならないから・・・・」
「・・・・・」
「だけど・・・、まだ、先はあるでしょう?」
「・・・うん?」
オミからの愛撫に身を任せながら、セフィリオは首を傾げた。
「先?」
「・・・これから、まだ、どうなるか分からない僕達の未来・・・」
後悔ばかりしていても、先になど進めない。
けれど、振り向かずにいられない過去があるとしたら。
「・・・それは、全て・・・セフィリオにあげるから」
「!」
身体の上の、オミの肌がかぁ・・と体温を上げた。
見えないけれど恐らく、顔も真っ赤に違いない。
「・・だから、・・・もう」
過去を振り返ることは、やめてしまおう。

今はただ、目の前にいる貴方が欲しいから。






END




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