*自覺*
あの、軽すぎる性格が嫌い。
強すぎる独占欲も苦手だ。
強引で、自己中心で、ワガママで、意地悪で。
こんな奴のどこがいいのか、もう自分でもわからない。
わからないけど・・・・・。
「・・・って話があってよー!」
「・・・ふぅん」
「何だ、つまらなさそうだな」
お前が聞きたいって言うから話したのに。
シーナのふてくされた顔に気づいて、慌てて僕は頷いた。
「え、う、うん?」
そーかな、と誤魔化してみるけど効果はなし。
「許してよシーナ」
「じゃあさ、ちゅーしてv」
「は?」
してくれたら許してやる。
そう言って、んーと突き出された頬に、僕は固まった。
話を聞いてなかった僕が悪いけどなんでよりにもよってキスなんだ!?
「オミ?どうした?」
にやにや笑いでシーナが呟く。
そんなに怒ってないような雰囲気だから、別にしなくてもいいかなと思ってたら、急に扉が開かれた。
「げ」
「・・・・どういうつもりかなシーナ?」
「じょ、冗談だって!そんなに怒るなよー」
まさか本気な訳ないだろー!
「じゃ、またなオミ!オレ用事思い出したから!」
冷や汗を流しつつ、後退りしたシーナは、そのまま僕の部屋から逃げるように出て行ってしまう。
「シーナ?!」
思わず立ち上がって追いかけようとした僕の腕を掴んで、止められてしまった。
「・・・全く、油断も隙もない」
軽く肩を押されて、すとんと椅子に座らされる。 その正面で憤慨したと言うように腕を組み、セフィリオが呟いた。
「君も君だ。あれだけ2人っきりにはなるなって言ったのに」
誰が君を狙ってるかわかったもんじゃないんだから。
そう言われても、と僕は言葉を濁した。
だって、僕は男で、まだ子供で。
今は軍主なんてやってるけど、本当に何の力もない子供なのに。
「僕なんかを狙っても何も得なんて・・」
「だから危ないと言ってるんだ。自覚がないからねオミには」
何を・・・と、反論しようとした唇を、不意に塞がれた。
触れただけですぐに離れてしまったが、そこを指で撫でられる。
「オミのココに触れていいのは、俺だけだよ」
にっこりと嬉しそうに笑われて、続けようと思っていた文句は綺麗に消えてしまって。
「・・・う゛ー」
「唸っても駄目。わかった?オミは、誰のもの?」
さらりと髪を撫でる手が気持ちいい。
椅子に座ったままの僕は、目を細めたまま視線を上に向ける。
嫌いで苦手なとんでもない相手なのに。
「オミ?」
囁いてくれる名前はとても優しくて。
触れてくる手はいつも暖かい。
「・・・・セフィリオ」
僕が名前を呼べば、嬉しそうに、もう一度キスをくれた。
-----***-----
ベッドの上で転がっていた僕は、ふわりと揺れた空気の違いに目を開いた。
隣では軽く紫煙を燻らせていたセフィリオが、起きた僕の髪に指を絡めてくる。
「・・・・爛れてる」
「まぁ、そうかもね」
結局あのまま昼間っからコトに及んでしまった訳だが、もう慣れたものだ。
セフィリオ曰く、『キスだけは身体に悪いから』らしいけど、だからって最後まで行くものなのかな普通。
窓の外は、ようやく日が傾いてきて、そろそろ過ごしやすい穏やかな時間になる。
「そう言えば、シーナとは何の話を?」
「・・・・あー」
言っていいものか暫く悩んだ僕は、彼相手に黙り込むのは得策ではないと口を開いた。
「今日、下の酒場でシーナが女の子たちに話をしてたんですよ」
3年前の戦争のことを。
『3年前』というキーワードに、セフィリオの眉が微かに上がる。
「へぇ、どんな?」
当事者として、やはり気になるのだろう。僕は少し申し訳なくて、小さな声で続けた。
「こんなの、本人から聞くべきことですけど、・・・気になってつい」
3年前の『セフィリオについて』教えてと言ってしまった。
シーナは二つ返事でOKしてくれたけど、話を聞いている間中、僕の気はそぞろとしていて。
「やっぱり、影でこそこそと話されると面白くないでしょう?」
他人からそんな話を聞いているなんて分かったら、気を悪くするだろうし。
何よりも、詮索されるのが嫌いなセフィリオが、怒ってしまわないかと不安だったのだ。
こっそりと視線を上に向けると、予想に反して穏やかな表情で笑っている。
「・・・怒ってないの?」
「何で?怒る必要があるの?」
「だって、昔の話は嫌うじゃないですか・・・」
「・・・今更昔の話をしても過去は変わらないからね。でも」
好きな相手の事をもっと知りたいと思ってしまうのは、仕方の無い事なんじゃない?
「・・・っ!」
「あ、やっぱりそうなんだ?」
一気に顔を赤くした僕に、くすくすと笑うセフィリオ。
「・・・もう、知りません」
「からかったのは謝るよ。ほら、ね?機嫌直して・・・?」
さっき後悔したばかりだと言うのに、肌に触れる唇は熱く甘く激しくて・・・・。
「・・・ん、・・ぅ」
煙草をいつもの灰皿(いつ持ち込まれたのか、もう分からない)に押し付けて、僕の唇にもキスを落とす。
何度か啄ばんで、深く重なって・・・。 離れた時に唇に残った少し苦い味が、くすぐったかった。
-----***-----
「・・・今日は、仕事は?」
少し気だるい身体を起こして、僕は記憶を呼び起こした。
「夜から軍事会議が入っています。まだ、少しなら時間があるかな・・・・」
確認しようとベッドから降りた僕の腕を、セフィリオが掴む。
「何?」
そのまま腰を抱き寄せられて、抱きしめられる。
セフィリオの腕は細い割には力強くて暖かい。
痩せて見えるけど、鍛えられた堅い胸板に少しドキドキしてしまう。
「オミ、俺が好き?」
「・・・いきなりなんですか?」
「うん・・・ちょっとね」
セフィリオはこんな風に、いきなり甘えてきたりする。
くっ付いてるのはいいんだけど、僕まだ何も身に付けてなくて。
冷えてきた空気に小さく身を震わせたら、更に強く抱きしめられた。
「セフィリオ・・・?」
服に手を伸ばした僕を押し止めるように、無言で訴えてくる気持ち。
『離れたくない』
我が侭が言えるなら、僕だってそうだけど。
でも、僕は・・・。
「ごめん。用意しなきゃだよね」
名残惜しげに腕を放して、脱ぎ散らかされていた僕の服を肩からかけてくれた。
「ん・・・ごめんなさい」
まだベッドに座ったままのセフィリオに、僕は身を屈めて小さくキスを送る。
ちょっと驚いた様子だったけれど、その表情はふわりと嬉しそうな笑みに変わった。
ずうずうしくて、俺様で、人の話なんか聞かない我が侭な人。
だけど。
その束縛が嬉しくて、嫉妬されてくすぐったくて、甘えられると安心する。
たまに見せる笑顔とか。
気付かないほど微かな気遣いとか。
そんなことも、嬉しくて。
「セフィリオ」
「何?」
身支度を整えて部屋を出る僕は、一度振り返って尋ねてみた。
「僕のこと、好きですか?」
「・・・・今更だけどね」
愛してるよ。
見送りだと扉の前にいたセフィリオはくすくす笑いながら、耳元で囁く。
「・・・ありがとう。じゃあ、行ってきます」
まだ少し恥かしくて、面と向かっては言えないけど。
僕も、あの嫌いだったあの人のことを。
今ではとても、大好きだから。
END
⊂謝⊃
出来ました〜!もう謝っても謝りきれないぐらい時間掛かってすみません〜!
一ヶ月は前のリクエスト、(死)やっと完成でございます・・ッ!
しかもヘちょい話でゴメンナサイ・・・<(_ _)>俺は遠くへ逝って来ます(笑)
っと、78787HITを踏まれた小町様よりリクエスト、
「セフィが好き(セフィに惚れてる?)事を自覚するオミ」
でございましたv
長年連れ添った夫婦みたいになってますが、気にしない★
お気に召されなかったら新たなリクとともに殴りこみOKですので(笑)
それでは、またv
斎藤千夏 2004/01/22 up!