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A*H

ティント編

*The given life.*


2

「これで、とどめだっ!!!」

恐怖に狂ったネクロードには少々てこずったが、正気を無くした相手を葬るのは容易いことだった。
ビクトールの星辰剣で貫かれ、ネクロードは土に・・・返り、全ては終わった。

「オミ、よくやった・・・ってセフィリオ?どうした」
「・・・・・」

静かに、目を瞑ったままのオミを腕に抱いて、セフィリオはそこに座っていた。
全てが終わった今でも、身を動かそうとしない。

「・・・もしかして」
「・・・・・」

何も答えない彼に、面々はお互い顔を見合わせる。

「オミ、オミ!ねぇ、なんで動かないの?!全部終わったんだよ?!!」
「やめろナナミ、大丈夫だから!」
「嘘、嘘だよ!ねぇ?嘘だよねセフィリオさん!オミが大丈夫って言って囮なんてやったのに、ねぇ!!」
「二人に、してやろう。すぐ目ェ覚ますさ。こんな所で死ぬ訳ねぇよ」
「やだぁー!離してビクトールさん!オミ、オミー!!!」

バタン。
彼らが出て行ったその後も、オミはピクリとも動かない。
セフィリオの腕に支えられて、目を閉じたまま、ピクリとも。
動かない。

「・・・・」

静かな教会の中で、彩られたステンドグラスから柔らかな夕日が差し込んできた。
丁度、オミとセフィリオの座り込んだ場所。
そこに、静かに色付いた光が降り注ぐ。

「・・・・オミ」

神の使いだろうが、その神本人だろうが、セフィリオにはこの魂を渡す気はなかった。
天国のような手の届かない場所へなど、絶対に連れて行かせない。
だから。

「目を・・・開けて」

もう一度、これが最後とキスを贈った。
小さく開いたままのオミの唇に、呼気と共に、静かな気<いき>を送り込む。
セフィリオの右手に宿る紋章が、静かに輝いた。




-----***-----




「・・・・・ぁ、れ・・・?」

スゥ・・・と深い眠りから覚めるように、オミはゆっくりと目を開いた。
ステンドグラスから差し込む光は、蒼い満月の柔らかな光。
ぼんやりと見上げてみれば、セフィリオがいた。
どうやら、彼の腕に抱かれているらしい。

「・・・泣い、てる・・・?」
「・・・・・」

教会内は暗く、照明など何もない。
少し俯いた彼の顔は見えなかったが、それでもその頬に流れる光るような筋に、オミは手を伸ばした。
それに触れるか触れないかという瞬間、急に身体を抱き寄せられて、きつく抱きしめられる。

「・・・・本当の紋章の力、使えましたか・・・?」
「・・・・・」
「僕の命は・・・貴方のその力でここまで保ってきたんです」

聞きたくないと言うように、抱きしめる腕に力がこもった。
それでもオミは話し続ける。

「・・・ルックに気を分けて貰って、それでも零れ落ちる時間は止められなかったのに・・・」

オミも手を伸ばして、しがみ付くようにオミを抱くセフィリオの頭と背に回す。

「貴方に・・セフィリオに、命を貰って・・だから、僕の命は」



貴方のものだ。




静かに流れる時間の中、二人はずっとそのままの状態で身動きひとつしなかった。
離れてしまえば、その腕の中の存在さえ、消えてしまうような、満月の夜。

「オミ・・・・・」
「はい・・・?」

小さい声が、教会内に響く。
だから、答えも静かに返した。







「今夜はこのまま・・・・そばにいて」


返事の変わりに、オミは小さなキスをひとつ、贈った。










END


⊂謝⊃

 The given life.  タイトル訳:与えられた生命
 
 掛や和也に、「主人公苛め、大好きだね(笑顔)」と何度言われた事でしょう。
 はい、好きです。大好きだ――――――!!!
 だからサ○って言われるのか俺は。(笑)
 すいません、ちょっと苛め過ぎました。オミ、死なないでね?(苦笑)
 そしてそして。ネクロード弱ッ∑( ̄□ ̄;!!!
 最後なのに主人公二人とも戦闘に参加してないでいちゃこいてるし!(違)
 ・・・・・・いいのかなぁ?こんな終わり方で。(汗)
 長い長い話にお付き合い下さって、本当にありがとうございました!!
 残すところ、ティント編はエンディングひとつとなります。
 次はそんなに長い話じゃないと思うんですけど・・・・。
 実は、このお話はここで終わりでした・・・んが。ある事実が発覚!!
 「そういや、(すっかり)ジェスのこと忘れてた!!」
 という訳で、平和になったティント市とジェスについての後日談を書きます。
 いやー、やっぱり俺はジェスさんのこと気に入らないのかなぁ・・・・(オイ)
 なので、少しでも彼が救われるような話が書けたらいいですね。
 それでは、近いうちにまたお会いしましょう★

 
斎藤千夏 2003/08/31 up!