A*H

9/18オフ会にて頂いたお持ち帰りリクエスト--->>wato*m様v
坊×2主痴漢ネタ!セフィリオ×オミでお送りいたします。(笑)

*Wish 2*










しかし、仲良く固まって移動出来たのもほんのわずかな時間だけで。
「・・・人、多すぎ」
今オミ達が歩いている周辺には先ほどから、次から次へと人が集まって来ては足を止めていく。
「オミ、平気?少し顔色悪いね・・・。人に酔ったのかな」
この人ごみの中でも何とか逸れずに済んだのは、オミの後ろを付いて来ていたセフィリオだけで、前を歩いていた四人とはもう随分前に離れ離れだ。
「う、ん・・・ちょっと、そうかも」
運良く空いた背の低い石壁にオミを凭れさせ、セフィリオは辺りを探すように見回した。
食べる物は至る所で見かけたのだから、どこかに飲み物も置いていないかと探しているのだ。
「・・・近くには無いみたいだな。ちょっとここで待ってて、ちょっと探して・・・オミ?」
「え?・・・あ」
そう言って離れようとしたセフィリオのマントを、オミは無意識で掴んでいたらしい。
この人だかりの中に置いて行かれることが心細いのか、不安そうな表情を浮かべるオミに、セフィリオは小さく笑う。
「・・・すぐ戻って来るから。ここから動かないでいてくれれば、すぐ見つけられる」
「あ、ち、違います!これは・・・!」
真っ赤になって否定するけれど、それが逆に肯定しているとは気付かない。
頭から被ったままのマント越しに髪にキスを降ろされて、オミは慌てて手を離した。
薄暗い事とマントが邪魔をして、俯いてしまった照れた顔が見られなかったのは残念だけれど、セフィリオは小さく笑ってオミから離れた。
万一、オミが移動してもセフィリオには見つけられる確信がある。
そもそも他の四人とはぐれたのは自然の成り行きなどではないのだし。
「さて、飲み物は・・・あ、あそこか」
割と早く見つけられた屋台では、結構な種類の飲料が並べて置かれていた。
普通に水から子供用に蜂蜜水、少し大人向けに果実酒やエールまで。
その中から水を取り、足早に戻る途中でオミの横に誰か立っていることに気が付いた。
相当な人の数なのだから、立っているだけなら別に何の問題も無い。けれど、どうやらオミに向かって熱心に話しかけている様子だった。
「・・・全く、可愛い恋人を持つと気苦労が絶えないね・・・」
気分が悪そうなオミを見かねて話しかけているのか、持っていた飲み物をオミに手渡している。
オミも最初は断る気だったのだろう、受け取れないと首を振って拒否しても、結局無理矢理渡されてしまった。
戻るまで飲まないでくれと願いつつ、早足で戻ったその時。
「っわ!?」
「いっただき!危ないぜ旅人さんよ。人をそんなに簡単に信用しちゃいけねえな」
頭から被っていたマントを剥ぎ取られ、最初にオミに話かけていた相手も走り去る男を追いかけるように走っていく。
油断させてから持ち物を奪い取る手口なのだろう。
普段であれば追いかけて奪い返すが、この人ごみでは、すっかり正体を明かしてしまったオミを放っておく方が危険だと思えたのでやめた。
「オミ・・・!」
「・・・あ・・・、あはは、やられちゃいました」
軽くオミの体を調べて見ても、別段外傷はない。ほっとしてから、問いかける。
「他に、取られたものは?」
「誘拐紛いに連れて来られたので・・・。何にも持って来てないですから。・・・ビクトールさんには、悪いことしましたけど」
折角用意してくれたものだったのに、ああも簡単に取られてしまっては面目が立たない。
それより何より、先ほどから周りの視線が少し気にかかる。暗闇でも赤い胴着はかなり目立つのだ。
「そんなのは別に気にしなくて良いよ。とにかく、無事ならそれで。はいコレ持って」
「せ、セフィリオ?あの・・・何?」
眼前に水を渡されてつい反射で受け取ると、続けて抱き締められたと思った瞬間にセフィリオが着ていたマントの中に一緒に包まれていた。
流石に顔までは隠してはいられないけれど、服を隠すだけでも十分効果はあるだろう。
「ま、夜の風も冷たくなってきた季節だしね」
セフィリオはそう言って誤魔化したけれど、包んでくれる腕に他意はない。
「・・・あ、りがとう・・・」
「どういたしまして。・・・っと、あぁ、成程」
突然オミの顔がはっきり見えたと思ったら、大きな音と共に大輪の花が咲き誇った。
「人が集まってくると思ったら。この場所はある意味絶好の見物所だったみたいだね」
ある程度は見晴らしが良い高台で、見上げた正面の夜空に大きな花が咲いている。
「・・・花火、ですか・・・?これ」
「うん?・・・オミ、見たこと無かったの?」
「え、ええ・・・本当に、綺麗」
先程までの気分の悪さも大分収まった様子で、オミは微かに笑みを浮かべながら空を見上げた。
夜空を見つめるオミの瞳に、色とりどりの花弁が散っている。その横顔を無言のままに見つめながら、セフィリオは少しだけオミの身体に回した手を動かした。
けれど、花火に夢中のオミは気付かない。
綺麗なものを見上げるオミの表情はとても綺麗だが、そんな顔を間近で見せ付けられているセフィリオも随分と鬱憤が溜まり始めていた。
そもそも、今日は朝から構ってもらった記憶もなければ、こんな風に近くでオミを抱き締めたのは本当に久しぶりだ。
例えここが外だろうと人前だろうと、こんなに傍で綺麗に微笑む恋人に対して何も出来ないほど枯れた身体ではないので。
「ねえセフィリオ、本当に花火ってこんなに綺・・・っ、?」
不自然に途切れたオミの言葉に視線を上げれば、何かを感じ取ったのか驚いた顔をしたオミと目が合った。
「・・・花火より、綺麗なものがここにはあるけどね・・・?」
オミの言葉の続きを奪って、瞳の中に映る自分の姿に、にっこりと笑う。
オミの瞳がどんなに綺麗なものを映していても、やはり一番見たいのは、そこに映る自分の姿だ。
「・・・ちょ、っと、まさか・・・こんな所で・・・」
「場所なんて関係ないよ・・・。ほら、オミは花火を見てなきゃ。・・・それに水、零さないように持ってないとね?」
「・・・ッ!!」
顎を軽く持ち上げられて、空を向かされた視線のままに、耳元で囁くように告げられた。
それだけで、簡単に染まってしまった頬を隠そうにも、顎を固定されているから俯けない。
「も、離し・・・」
「良いの?・・・さっきからまだこっちを見てる目は沢山あるけど、こんな所でバレたらどうなるかな?」
本能的に逃げようともがいたオミの腕は、本気の力を出して暴れる前にあっさりと動きを止めてしまう。
先程、派手にマントを取られたことが痛かった。
ちらちらと、軍主かどうか確かめようとする視線が向けられているのは、俯いているオミでも分かる。
このままだとセフィリオの腕の中から逃げようにも、マントがなければ注目の的になってしまうのは確実だろう。
「・・・それにね、静かにしてないと・・・聞こえるよ?」
「・・・ッ、ひ、卑怯だ・・・ッ!」
つまり、はっきり言ってオミに逃げ道はなかった。
抵抗しようにも持たされていた水が邪魔で、セフィリオの手を止められない。
声を出して文句を言えば、セフィリオのように耳元で囁けない分近くの誰かに聞かれてしまうかもしれない。
誰もが空の花火に気を取られているからといって、誰もこの状態に気付かないとは限らないから。
「お願いですから・・・」
震える声を何とか抑えて小さく声を掛けても、胴着の合わせから滑り込んできた指先は、肌の上を滑る行為を止めてくれない。
色んなものを盾に取られた状態のまま、オミは腰を締め付ける帯が緩んだのを感じた。
「・・・ちょっと、まさか」
「・・・最後まではしないから、安心していいよ?」
「そんなの、出来る訳が・・・、ぁ・・・っ・・・」
文句の言葉を吐けば、代わりに零れ落ちるのは甘い悲鳴だ。オミは慌てて息を止めるように、声を必死で押さえ込む。
セフィリオの手の平は胸から下へと、徐々に滑り降りていく。緩められた帯はなんとか腰で止まってはいるが、これでもうセフィリオの行く手を邪魔するものはない。
ドンドンと空気を揺らして花火が打ち上げられる轟音が響く。それを見物している人たちが上げる嬉しそうな声など全てが混ざり合えば、オミが押し殺した小さな嬌声など誰の耳にも届かないだろう。
それでも、オミの耳にはその轟音さえ聞こえていない。
気にしなければ気にならないほどの接触も、敏感になってしまったオミの肌には酷く辛い刺激なのか、先程から震える感覚が狭くなってきている。
「・・・オミ・・・?」
「・・・っ〜・・!」
もう、花火を見ている余裕も余りない様子で、こんな所で行為に及んだセフィリオを睨む視線だけが鋭い。
けれど差恥の為か生理的なものなのか、真っ赤に染まった頬と、目尻に溜まった涙が、その視線を酷く甘いものに変えていることを、オミは全く気付いてもいないのだろう。
「・・・良い顔してる。そんなに、気持ち良い?」
くすくすと笑うセフィリオに、オミはどうにかしてこの行為を止めさせようと考えるが、今動けば間違いなく帯が地面へと落ちてしまう。
その状態で、乱された格好のままセフィリオのマントの中からも逃げられずに、目の前にある石壁に凭れるようにして立っていることしか出来なかった。
「・・・っ」
秋の夜の風は冷たい。
こんな人ごみの中でも、顔に感じる空気は寒いほどなのに、オミの身体は相反して徐々に体温を上げていく。
素肌を撫でるセフィリオの手が熱いのか、はたまたその手に触れられた箇所から、熱を移されている所為なのか。
「・・・、・・・っ・・・―――」
胸から腰へと下がっていくセフィリオの熱い手は、どうしてかそこを避ける様に脚へと滑り降りていく。
誰にも気付かれないように・・・真っ赤に染まった顔で零れそうになる声を押し殺す。
オミにはもう自分の鼓動の音しか聞こえていなかった。そして、セフィリオの囁く声だけしか、耳に届かない。
歓声と轟音の鳴り響く中で、まるで切り取られたかのような空間。
「・・・触ってないのに、辛そうだね・・・?」
凭れるように倒れてきたセフィリオの唇が、微かな汗の浮いた首筋に触れる。
くすくすと笑い声が混じる言葉に、オミは俯いたままぎゅっと強く目を瞑った。
石壁に凭れていないと、いや、壁に押さえつけるようにセフィリオが後ろから支えているからこそ、オミはまだ立っていられる。
「いつもよりも感じやすいんじゃないかな・・・?ねぇ、興奮してる・・・?」
「・・・っ、ぁ・・・!」
カリ・・・ッと音と立てて耳朶を噛まれた瞬間、とうとう塞いでいた唇から音が零れ落ちてしまった。
手からも力が抜け落ちて、持っていた水は地面に広がっていく。
近くの何人かが、そんなオミの様子を見て不思議そうな顔をして見せた。
見たことのある顔だとか、気分が悪そうだとか、セフィリオが居る手前声を掛けてくる者はいないが、先程より多くの視線を集めてしまったことは事実だ。
「・・・も、セフィリオ・・・」
中途半端に追い上げられた熱は、出口を見つけようと必死になって身体の中を暴れまわる。
これ以上堪えることなど、出来そうにもない。
オミは、縋るようにセフィリオの腕に手を滑らせる。
「お願・・・」
「あ、見つけた!オミー!!」
ほんの、人並みを2、3人超えた辺りで手を振っているのは、今まで必死で探していたのだろうか。他2人を連れたナナミの姿があった。
「もー!オミもセフィリオさんも!ルックも途中から居なくなっちゃうし、何のためにみんなで来たのかわからないじゃない!」
大声で文句を言うナナミの声は、腕の中で顔を青ざめさせているオミにも勿論届いている。
このままでは気付かれてしまうと思っているのか、泣きそうなオミの瞳とかち合った。
「オミ。・・・気絶して」
「え?・・・っ、ゎ」
セフィリオの考えを読めないままに、突然身体が抱き上げられた。
勿論周りに居た人たちからの視線は大きいが、オミは顔を隠すようにセフィリオの胸に凭れて目をきつく閉じる。
「あ、あれ!?オミどうしちゃったんですか!?」
「うーん、ちょっと人に酔ったみたいだね。疲れてもいたんだろう」
人ごみを抜けたところで、ナナミたちが走り寄って来たが、問いかけられた質問にセフィリオはあっさりこう答えて見せた。
「どこか、静かな場所で休ませてくるよ。・・・ほら、まだ祭りは終わってないんだ。折角来たんだから、君達はまだ楽しんでおいで」
セフィリオのマントの中に包まれて、汗を滲ませたオミの様子は確かに辛そうに見えた。
折角来たのだから、オミと一緒に楽しみたかったのだけれど・・・これでは仕方がない。
「・・・オミ、早く元気になれよ?」
「わ、わたし達も終わったら、いつもの宿屋さんに向かうから。起きたらオミにそう伝えておいて下さいね」
「ん、伝えておくよ」
ナナミとアイリは、少し寂しそうに二人から離れていく。けれど、リィナだけはなぜか笑顔を浮かべたままでセフィリオを見つめていた。
「・・・何?」
「いいえ・・・でも、オミ様は英雄様だけのものではありませんよ・・・?」
リィナの声に、オミが小さくびくりと反応した。
薄暗い中で、少し離れていたリィナには気付かれなかっただろうが、腕に抱えていたセフィリオはオミの動揺に気がついた。
このままではオミを起こされかねない。起きたと気付かれてしまえば、ナナミもアイリもまた戻ってくるだろう。
「・・・なんの事かな。君も、早く行かないと・・・また逸れるよ?」
「えぇ、貴方様のように逸れるわけには行きませんものね。・・・では、また明日」
ひらりと服の裾を翻してアイリたちを追っていくリィナの後姿に、流石のセフィリオも少々苦虫を噛み潰した。
どうやら、わざと逸れたことも、オミが気分を悪くして倒れているわけではないということも、彼女には筒抜けらしい。
そしてさり気なく『今日は戻らないのでしょう?』と肯定を含んで言われてしまった。
「・・・っ、どうするんですか、このあと・・・」
このまま宿に戻ることなど、当然だが出来ない。
抱き上げられた腕からも解放して欲しいが、その前に疼く身体を鎮めて貰わなければ、歩ける自信すらもなかった。
「んー、そうだね。一先ず・・・人の居ないところに行こうか?」
不意に、抱き上げられていたオミの身体の位置がずれ、オミは朱色に染まっていた頬を更に真っ赤に染め上げた。
「あ、の・・・なにか、当たってるんですけど・・・」
「そりゃあね。・・・オミが、可愛すぎるのが悪い」
「な、なんで、僕の所為・・・っん、ん・・・ッ!」
まだすぐ傍で騒ぐ声が聞こえる木々の陰。
突然腕から下ろされたと同時に、背を幹に押し付けられたまま唇を塞がれた。
人気の無いところ・・・と言いつつも、セフィリオが早急に行為に及んだのは、二つの理由がある。
「オミ、恥ずかしいの・・・結構好きだよね?」
「・・・ッ!?」
マントを広げられた地面にずるずると滑り落ちながら、オミは涙目のままセフィリオを睨む。
けれど、その視線を嬉しそうに受けたまま、セフィリオは言葉を続けた。
「後は、俺が我慢出来なくなっただけ。・・・オミ、さっきの『お願い』の続き・・・聞かせてくれないか?」
強引で、わがままで、自分勝手なくせに。
「・・・っ〜〜」
甘やかすだけ馬鹿だって分かっていても、結局は。
「・・・セフィリオ」
目の前に屈むセフィリオの首へと両腕を伸ばして、オミは引き寄せたセフィリオに合意のキスを求めた。





END






⊂謝⊃

この度はリクエストありがとうございましたv大変楽しく書かせていただきましたよ〜!!
すみません、本当なら『あの場』でお渡し出来れば良かったのですが、
如何せん遅筆なもので、こんな形でお渡しすることになってしまいました・・・(汗)
お目当ての痴漢シーンが短くてゴメンナサイ!最後のお楽しみも暗転してすみません(笑)
ではでは、楽しんで貰えたら嬉しいですv
書かせて下さいまして、ありがとうございました!


C.Saito 2006/09/30 up!