A*H

*いつかは・・・・・* 

2003年10月26日発行コピー本/完売致しましたので掲載スタート★





誰でもたった一つの願いを、
ずっとずっと抱き続けるのは辛くて苦しいけれど。

それを乗り越えて願い続ければ――――・・・・・



―――*―――

朝目が覚めて、誰もいない自分の部屋の暗さに違和感を覚えた。
いつもならもう少しは明るい部屋が、今日はどんよりと空気も重い。
横になっていた体を起こし、窓の外を覗く為に立ち上がった。
わざわざ見なくても、壁やガラスを叩く音で否応なくそれと分かる。
「雨・・・」
窓に引いてある布を少し引いて、案の定の空模様にうんざりした。
雨の日は好きじゃない。
嫌な記憶を嫌でも呼び起こされるから。
「・・・・この雨は長いな」
そして、特に夜の雨は嫌いだ。
この家での夜の雨は、まさにあの日の再来だ。
このままこの雨は夜まで降り続けるのだろう。
僕は雨をただ見つめながら小さくため息を零して、窓を覆う布をかけ直した。

けれど辛い気持ちの中に、やわらかな笑顔で笑っていた君の顔が蘇る。
『ユエさんって雷、怖いんですか?』
二人してベッドに横になったまま、他愛もない話をしていた時だ。
突然、部屋の窓の外が光って、激しい雨がガラスを叩いた。
その音に嫌な顔をした僕を、リアは目敏く気付いてそう言ったのだ。
驚いた顔をしていたのだろう。
小さく違うと呟くと、リアは笑ってこう言った。
『僕も昔嫌いだったんですよ。でも・・・・今は好きになれそうです』
どうして?と聞くと、リアは、僕の頭を抱くように抱きしめてきた。
リアが抱きついてくる事はよくあったが、こうやって柔らかく抱かれたのは初めてだった。
そして、嬉しそうに囁く。
『雷が鳴っている間は、こうやってくっついててもおかしくないでしょう?』
例えここが軍主であるリアの部屋だからと言って、気さくな仲間達はノックもせずに入ってくる事が間々あった。
決定的な現場を見られた事はまだないが、少し気にしていたらしい。
そんな答えに一瞬唖然としてしまったが、リアらしくて思わず僕も笑ってしまった気がする。
それから少し、ほんの少しだけ、雨が嫌いじゃなくなった。


「リア」
トランの自分の家で、彼が迎えに来るのを待つ。
今日は雨だから、恐らく来ないだろうけれど。
この大きな家にたった一人でいる事がこんなに辛いことだとは、今まで本当に気付かなかった。
時計の刻む音と、窓を叩く荒い雨の音。
そこにパタンと、大きな音が混ざる。
レパントから譲り受けた手慰みの装丁本も、あらかた読み終わってしまった。
元々、する事などない。
時間など、有り余っているのだから。
「・・・・リア」
もう一度、小さく名前を呼んでみる。
寒くても、それだけが暖かい。


今、君は何をしているのだろう―――――・・・・・。


―――*―――


今、何してるのかな?


シュウさんに少し呆れられながら何度も失敗して、なんとか仕事は終わった。
今日はいつもより量が少なくて、いつもよりも少し簡単だった。
それが嬉しくて、僕はやる気満々だった!
「・・・・えー、何でぇ・・・?」
なのに・・・・せっかく頑張って全部を終わらせたのに、外は雨。
雨避けの傘なんて、意味がないくらい十歩も歩いたらずぶ濡れになりそうな雨だった。
だから、今は大人しく自分の部屋にこもってる。
会いたい人とは会えないから、外に出たって面白くないし。
「あ」
今、遠くの空が小さく光った。
耳を澄まして窓辺に寄ると、少し遅れて音が聞こえてくる。
小さい頃はナナミに、これはオバケのお腹の音で、悪い子を食べちゃうんだとか脅かされた事があったっけ。
それだけが理由じゃないけど、僕は雷が嫌いだ。
・・・・ううん、嫌い『だった』。
今は、ユエさんのお陰で、少しだけ、好きになれたと思う。
雷って黄色と思ってたけど、よく見たら青いんだ。
白くて青くて、眩しいくらいの光が、たった一瞬だけ真っ黒の空に弾ける。
その瞬間だけ、その周りの景色がハッキリと見えたりして、結構綺麗なんだ。
「ユエさんも見てるのかな?」
だったらいいなと思う。
そして、少しでもあの時のことを思い出して・・・・・。
「僕のこと思い出してくれていたら・・・嬉しいな」
と、その時。部屋の扉が、コンコンと音を立てた。
僕は慌てて立ち上がって、扉へと走り寄る。
「あ、はーい!今開けます」

―――*―――

「驚いた?」
驚いた。
どういう風の吹き回しなのか。
「ひとつ、言っておく事があってね」
この大雨の中全く濡れていないルックの様子にタオルを出そうとして止めた。
変わりに、茶器を用意する。
雨の日は体が濡れてなくても、寒く感じるものだから。
「僕に、話を?」
「君の事じゃない。あっち」
「リア?」
「そう」
暖められたカップに、暖かい茶がゆっくりと注ぎ込まれていく。
グレミオがいなくなってから、こうやって茶を飲む事もなくなった。
「どうせ暇だと思ってね。この雨だし」
「・・・リアの事は?」
「そんなに気になる?」
このルックとは、三年前の解放戦争でも一緒に戦った仲間だった。
あの頃はまだ僕と同じで普通の風を宿した少年だったのに。
「変わらないね君は」
それでもこの三年で彼は成長を遂げて、今はナナミと同じ年齢だ。
リアより三つ上の、十七歳。
そして、今では僕と同じく時に縛られた者。
「用件、言うよ。リア・・・あの子もう長くないから」
「・・・・何だって?」
「知ってたんじゃないの?あの紋章を使い続けるとどうなるか。もう一年持たないね」
「一年・・・・で、リアが死ぬ?」
「言っとくけどその紋章の所為じゃないから。あの子自身が紋章を宿す事に、体の限界が来てる」
その紋章と言いながら、ルックは僕の右手に視線を落とす。
魂を掠め取る紋章は、大事かと言われれば間を置かず答えられる。
大事だと。
親友から預かった大切な紋章だ。
・・・・けれど、疎ましく思う事の方が多い。それも確かな事実で。
「あの子は使い過ぎた。でも、もう本人も知ってる。長くない事は」
だから、少しでも、時間が空けば。
「ここに来てたよね。会いに」
「リアが・・・?」
そういきなり言われても信じられる訳がない。
大切な人の命が、もう一年も残ってないなど・・・・・・・・。
「そう、いつ死んでもいいように。お別れの挨拶だったのかもね」
強く叩きつけるような雨の勢いが増し、空には青白く稲光と轟音が轟いた。

―――*―――

「どうしたの?ナナミちゃん」
扉を開けてみれば、そこに立っていたのは義姉のナナミだった。
嬉しそうに笑っている様子に、僕の背筋を冷たい汗が流れてく。
こういう時のナナミちゃんの笑顔って、何かを企んでることが多いんだもん。
「えへへvシュウさんにリアを貸して下さいって言ったら『どーぞ』って言われたからv」
「???」
「お仕事終わったんでしょ?ね、ちょっと付き合って!」
「え、でも僕・・・」
「いいからいいから!みんな待ってるんだよ」
みんな?
そもそも今日ナナミちゃんは城にいる女の子たちと、『秘密の部屋』にこもってるって聞いてたのに。
「・・・何、するの?」
「まだ秘密、だよ。着いてからのお楽しみ〜!」
ずるずると引き摺られて、僕は風呂場に押し込められる。
引き摺ってこられた僕を見て、テツさんも驚いた顔をしてた。
「???」
「ちゃんと綺麗にしてきてね!それともお姉ちゃんと一緒に入る?露天風呂の混浴もあるしねー」
「いいいいいよ遠慮する!!」
「いいじゃない姉弟なんだし。まぁいっか。着替えはここに置いとくからね」
ナナミちゃんの走って行く音を聞きながら、僕は言われた通りにお風呂に入る事にする。
こんな時間に入る人なんて滅多にいないから、久し振りに貸し切り状態だ。
そういえば、この前入ったのは・・・・。

『僕の我侭なんだけど、聞いてくれたら嬉しい』

「っ!」
思い出して、僕は慌てて首を振った。
「ひ、ひとりで良かった・・・かも」
あの台詞を言われる前、僕らはちょっとイケナイことをしてた。
僕は大好きだし、ユエさんも・・・その、だから、なんでいけない事なのかはまだ良くわからないんだけど。
その時のことを思い出しちゃって、恥かしいんだ。
多分、今の僕の顔は真っ赤だ。他の人が居なくて助かったかもしれない。
「・・・・何で、あんな事言ったのかな?」

『お風呂に入る時は・・・出来るだけ一人で入って欲しいんだ』

そういいながら、少し照れていたような気がする。
僕はその時もう眠りかけていて、あんまり聞こえてなかったんだけど。うとうとしてる僕を腕に抱いたままお風呂に入ってくれたんじゃなかったかな。
「・・・ユエさん」
色んな事を教えてくれたあの人が、僕は大好きだ。
ナナミちゃんもジョウイも、他の人も僕は大好きだけど、・・・・ユエさんとは違う『好き』なんだって、最近やっと気が付いた。
その違いを、聞いてみた事があった。
そしたらユエさん、あんまり笑わない人なのに・・・・。
「嬉しそうに・・・・笑ってくれたよね」
そんな笑顔が見れたから、なんでそんなに嬉しかったのか聞いてみた。
そしたら、ユエさんは・・・遠い異国の言葉を教えてくれた。
『西国の言葉なんだけれど、その国では『好き』という言葉は二つあるんだ』
おおまかには同じ『好き』っていう言葉で、でも意味が違うって言っていた。
『"Like"と"Love"。リアが皆を好きだと言うその気持ちは多分、"Like"』
"らいく"とか"らぶ"だとか、耳慣れない言葉に、僕は疑問符を飛ばしまくっていた。
そしたら飲んでいた冷たい茶器についた水滴を使って、机に書いてくれる。
"アルファベット"って言うらしいけど、僕は初めて見る文字だった。
そして、ユエさんは嬉しそうに言葉を続ける。
『人を好きになって、それがいつもと違うもので・・・たった一人に向けられた『好き』なら・・・それが"Love"なんだ』

僕がしきりに感心していたら、ユエさんは少し腰を浮かして、机の正面に座っていた僕にそっとキスをした。
いきなりだったから慌てたけど、そのまま囁くように耳元で・・・。

『I love you...Ria』

言葉の意味はわからなかったけど、凄く照れくさくて・・・・嬉しかった。
教えてもらった言葉の"Love"がそこにあったからかもしれない。
嬉しくて嬉しくて、僕は少し泣いちゃった。
目に滲んだ涙さえ、ユエさんは優しく拭ってくれる。
間近で見る深碧の虹彩は、柔らかく僕を映していて、凄く、好きだと思った。

隠し事をしてるのは、少し辛くて申し訳ないけど。
せっかく会えるんだから、会ってる時は笑顔でいたい。
楽しい思い出をいっぱい作って、後悔だけは、しないようにしたいから。
「言ったら・・・心配するもん」
僕と同じ気持ちだって教えてくれたから、もしユエさんにそう言われたら僕も辛いから。
だから、言わないって決めていた。
会う度に・・・これが最後かもって思うと、悲しくて泣きそうになるけど。

『僕は・・元気なリアが、好きだな』

『自分の信じた道を貫く。その気持ちを忘れないで』

『その自分の『弱さ』を認めてしまえることが、『強い』と言うことだよ』

『誰もがどれだけ手を伸ばしても届かないものは沢山あるのだから、無理して背伸びをするのではなくて、リアはリアのやり方でいいんじゃないかな』


大切なことをたくさん教えてくれた大切なあの人に、
心配などかけたくないから。

お風呂場を出た僕は、待ち構えていたテンガとミリーに捕まった。
ナナミちゃんはそこには居なくて、連れて行かれた場所は・・・・『秘密の部屋』
「あ、の・・・。ここ男は入っちゃダメって言われてる部屋なんじゃ・・・」
「いいからいいから。私達がいいよって言ってるんだし!」
「入った入った!入らないと〜〜」
ミリーが腕にぶら下がってるボナパルトを差し出してきた。
・・・・・・・怖いから素直に部屋に入ることにする。
「あ、来た来た。それじゃみんな、初めよっか!」
「はーい!」
「???」
元気よく返事をした女の子たちの中で、話がわかってないのはどうやら僕だけらしい。
それはそうと・・・何なんだろうこの部屋は・・・?
「黙って付き合ってくれたら、後でご褒美上げるからv」
居心地悪くきょろきょろしてる僕にナナミちゃんが満面の笑みでそう言った。
そのナナミの横で、ビッキーもいつも通りに笑ってるし。
「え、え?」
「はい、これ着てー」
「リアくんこっち向いて?」
「あ、違うのこれはね」
「やっぱり元がいいと似合うわねv最初からリアでやればよかったわ」
「え、えぇ――・・・?!!!」
もうされるがままの人形状態で・・・・何されてるのか良くわからないけど。
ナナミちゃんの言う『ご褒美』が少し気になって、僕は大人しくしていた・・・・。
けど、後からすっごく後悔した。
気が付いたのがもう、全てが終わった後で・・・・・・・って何で僕な訳?!

―――*―――

・・・・この格好、どうにかならないかな。
「どこのお姫様だろうね」
「うちの娘と取り替えたいわ」
「こんな雨の日に・・・何か揉め事でもあったんかねぇ」
鏡を見ることもこれを脱ぐ事も全部却下されて、僕は今こんな所にいる。
というか、ここがどこかまだ良くわからない。
ビッキ―に飛ばされて、気が付いたらここにいたから。
でも、どんな格好をしてるかは大体わかった。
だって皆僕のことを女の子だって言うし。
声を出したら絶対男だってバレるから話さないけど。
・・・・・これが、ご褒美らしいけど、ここってどこなんだろう?
どこかの建物の、部屋の一室。
下に降りたらさっきみたいに色々言われたから、最初に入ったここで僕は大人しくしていた。
窓から外を眺めてみる。
「・・・雨、強くなったな」
『雨』で連想してしまう、とても大好きなあの人のこと。
別に辛い事があった訳じゃないのに、今凄く苦しくて辛くなった。
会えないだけでこんなに苦しくなったのは、ユエさんが初めて。
会いたくて、逢いたくて。少し、涙が滲んだ。
雷はまだ鳴ってる。今ひとつ、近くに落ちた。
暗い空なのに、その一瞬だけ大地を照らして・・・・あれ?
「・・・・なんで?!」
僕は部屋を、濡れるのも構わず建物を飛び出して、走った。
こんな雨の日に、ユエさんが外に出るなんて。
「ユエさんっ!」
「・・・・リア?」
驚いた顔してた。
僕も凄く驚いてたのに。
よく見渡したら、ここはバナーの村で。
いつもは通り過ぎるだけだから、こうやってじっくりと見渡した事はなかったけど。
「どうして、ここに?」
「僕はナナミたちにご褒美だって・・・ユエさんこそ、どうしてここへ?」
そう訊いたら、ユエさんは一瞬辛い顔をして・・・・僕を抱きしめた。
雨がずっと降っていて僕もユエさんももうびしょびしょなんだけど。
冷たく冷え切ってる筈なのに、抱きしめられて、凄く暖かく感じた。
「・・・逢いたかったんだ。どうしようもなく、今・・・リアに」
「っ?!」
嬉しかった。
自分と同じ事を思ってくれていたなんて。
「僕も・・・逢いたかったんです。今、その事考えてました」
もう、僕にはユエさんと会える時間が限られている。
少しずつ少しずつ、細かい砂が隙間から零れ落ちていくように、自分の時間も無くなっていくのがわかるから。
「・・・・居なくならないで」
「ユエさん?」
「黙って・・・居なくならないで。僕はもう君を・・・手放せない」
いっそ言ってしまおうか。
どうしてこの人は、僕の気持ちを読んだみたいな事ばかり言えるんだろう。
僕が、欲しいと思う言葉を、すんなりと返してくれる。だから。
言ってしまいたい。死ぬのは凄く怖いから、・・・・・・そう思ったけど。
「・・・・いなくなんて、なりませんから」
「・・・・」
「ずっと傍に・・・いたいです。僕だって・・・ユエさんと離れたくない・・・」
腕を伸ばす。
身長差があって、なかなか届かないけど・・・背伸びして、そっと口付けた。
「!」
僕からのキスなんて初めてで、ユエさんはびっくりしてたけど。
「・・・・っふ・・・」
一拍置いた後に、腕にこもる力が強まった。
そう思ったら強く口付けられていて。
ここが雨の降る外だって事も、道端だって事も、もうどうでも良かった。
ただ離れたくなかったから、僕らはしばらく、ずっとそこで抱き合っていた。

―――*―――

翌日、ユエさんと城まで戻ってきた僕を、ナナミちゃんたちは盛大に迎えてくれた。
みんなの顔がものすごく嬉しそうでちょっと怖かったけど・・・・何考えてるのかは深く考えないでおこうと思う。
結局ナナミたちのあの遊びは、城の男の子を攫ってはあの部屋で着せ替えごっこをしていたらしい。
何が楽しいのか良くわからないけど、なんだか見慣れない機械でカシャカシャやられた。
アダリーさん作の"かめら"っていう発明品らしい。
「結構いいお金になるのよ?元が男の子なんて誰も知らないから、みんな喜んで買ってくし」
白い紙に映っているのは・・・あの時の僕?!
そう。あの後バナーの宿屋の部屋に戻って・・・・やっと僕は自分の格好に気が付いたんだ。
さすがに明るい下で見られるのは恥かしくて、部屋の隅っこでずっと小さくなってたけど。
でもそんな僕を見ても、ユエさんの様子はいつもと変わらなかった。
雨の夜なのに、優しく笑ってくれたし。
・・・・濡れた服を脱いで・・・・・何もしなかった訳でもないし。
あ、ダメだ。これ以上思い出したらまた赤面するっ!!
「・・・・売った?」
ユエさんのちょっと低い声で、僕は現実に引き戻される。
「え?・・・売ったって、ナナミちゃんっ!!これを人に売ったの?!」
「大丈夫よ!誰もリアだって気付かないわよv儲かったら何か奢って上げるから、ね?」
許してくれるよね?と小首を傾げられて・・・つくづく、ナナミちゃんには勝てない僕。
「怒ってないけど・・・・・・ユエさん?」
「・・・ナナミ」
「は、はい?!」
いつもよりも低い声だったから、起こられるんじゃないかって僕たち二人とも背筋をピンと伸ばした。
けど、その口から出てきた言葉は。
「僕にも一枚、くれる?」
「へ?・・・ユ、ユエさん??」
「えvもちろんですよ〜!!」
「な、何でですか〜?!」
「可愛かったからね」
「そんな可愛いなんて・・・・っ!!」
駄目だ。この微笑みにも、僕は勝てる気がしない。
カシャ★
「あっ!ナナミちゃんまた・・・っ!」
「だってマクドールさんと一緒にいるリアっていい顔してるんだもん〜v」
後であげるねってそう言って、ナナミちゃんは逃げるように走って行っちゃった。
「もう・・・。ごめんなさいユエさん。巻き込んじゃって」
「・・・怒ってないよ。だから、そんな顔をしないで・・・リア」
「・・・はい」
ずっと一緒にいたいけれど。
それは絶対叶わないって分かってるけど。
願うだけなら、それでいいのかもしれない。
初めて逢った時から、静かに心に秘めていた願い事。

ずっとずっと、いつまでも傍にいられますように・・・・・。

いつかは、願いが叶うことを信じて。





※2003年10月に発行したものをそのまま載せております。



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