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A*H

*強さ*



3





世界が白く輝き始める頃、リアはまだベッドの中にいた。
もちろん、ユエの腕の中で。

「あぁそうだ、ホウアン医師がリアに伝えてくれと言っていたけれど」

無理、していないかい?
こんな事をしておいて、言える台詞ではないけれど・・・ね。
髪と瞼に落とされたキスとユエの言葉に照れながらも、一瞬悩んで、恥ずかしそうに口を開いた。

「先日の・・・公開試合ありましたよね。あの試合ですけど・・・」

剣を交えるのは、嫌いじゃない。
根本的に体を動かすことは好きだから、むしろ色んな戦士との腕試しは楽しみにしている方だ。
けれど、あまり勝ち負けにこだわらない主義なのか、リアはどうも釈然としない。
勝者は一人ということが、どうにも腑に落ちないらしい。

「みんなそれぞれ僕と試合するために修行して・・・強くなって、来てるんですよ」

例えば、朝から晩まで稽古している人。
例えば、戦争でも、凄い業績を上げてくる人。
他にも、目に見えない努力を積んでいる人はごまんと居る。
そんな彼らに対して、リアは・・・・。

「でもこの試合って、僕は絶対負けちゃいけないって事なんですよね」

軍主であるリアには、負けは認められない。
年齢だとか、体格だとか、明らかに勝ち目のない戦いであっても、リアは負けてはならないのだ。
誰もが皆、『英雄は強い』と思い込んでいる。
その思いが軍の士気を高めるとはわかっていても。

「僕が勝たなきゃいけないのは、みんなじゃなくて・・・自分なんです」

この窮屈な世界で、何度逃げ出したくなったことか。
何時の間にか闘うことを強要されていたけれど、本心では絶対に争いたくない相手。
それでも闘わなければ、リアの願いは一生叶わない。

「・・・・リアは、強いと思うな」
「強くなんか・・・」
「その自分の『弱さ』を認めてしまえることが、『強い』と言うことだよ」
「・・・?」

何を言われているのか分からないと言うように、リアは抱き寄せられたままにユエを見つめた。
ユエは片手でリアの頭を抱きしめたまま、ずっと遠くを見つめている。

「『弱さ』を、認める?」
「・・・そう。武芸が秀でて強いという人物は、この世界に掃いて捨てるほどいるよ」

視線は遠い空を見つめたまま、どこか思いを馳せるようにユエは囁く。
リアが僕の事を『強い』と言うのは、僕がその『弱い』人間のひとりだからだよ。

「武芸や武器を調えて構えている人ほど、自分の『弱さ』を必死で隠そうとしてる人間なんだ」
「・・・・ユエさん・・・」
「けれど自分の『弱さ』を認めて、それを受け入れる『強さ』を持っている人は・・・ほどんどいない」

リア、みたいに『強い』人間は・・・ね。
だからこそ、人の上に立てる。
誰もがリアの元へ集まってくるのだ。
弱い人間を踏み台にして上り詰める『強さ』など、偽物でしかない。
その『強さ』に溺れたものは、いつか扱いきれない力に飲み込まれてしまう。
弱い人間を受け入れて包み守る力こそが、本当の『強さ』。
それは、己の『弱さ』を知る者にしか出来ない。

「でも!僕が逃げ出さなかったのは、もちろん城のみんながいたからですけど!ユエさんが、僕をずっと見ていてくれたから、逃げ出さずに頑張って来れたんです」

ほらやっぱり、僕が『強く』なれたのは。

「ユエさんのお陰ですよ」

月の腕の中で、ゆっくりと太陽が微笑んだ。






END


*謝*


 くさーい!!!!最初から最後まで甘い光線飛ばしまくりでした。
 え?そんなになかったって??またまたぁ~!・・・すんません、俺的にはいっぱいいっぱいです。(笑)
 暗いのか明るいのか良くわからない話でした。
 それでも書くのには実質3日掛かった・・・。(汗)
 いつもの事ながら、ユエ×リアは心理描写が多すぎる。うむむ・・・。
  
 今回の反省文は長くなりそうです。(笑)
 いい所で暗転させるなー!!!
 ・・・えぇ、何人の方がそれを感じてくれましたやら。
 ご希望が多ければ裏にupしますです。(笑) 
 だって実質これ初夜ですよっ?!!(オイコラ)
 
 最後の一文。
 月=ユエ  太陽=リア
 でした。(汗)
 ユエはご存知の通り中国語で『月』って意味ですね。結構有名。
 リアって名前に別に意味はありません。(ただ単に音で決めました。/死)
 後でコジツケテ意味付けるかも知れませんけどその時はその時・・・。
 何で太陽かっていうと、久し振りに見たキャラ設定で
 『彼の笑顔は太陽だ』
 って書いてたから。ただそれだけの理由です。あいてっ!石投げないで!避けきれないから!!(笑)
 ・・・少しずつ、二人の仲も進展し紋章の謎も(謎なのか?)解けてきました!
 エンディングまで後もう少しお待ちくださいませ~。(嘘です。/笑)

 長い反省文、お付き合いありがとうございました~☆

斎藤千夏 2003/08/06_up!



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