*Destiny...*
僕は、新同盟軍のサークリッド軍を率いるリーダーのリア。
未だに未熟な僕だけど、僕の仲間ってとても頼りになる人ばかりで、何とか頑張ってやってこれた。
幼馴染で親友だったジョウイは、敵対するハイランド皇国の王様になっちゃうし、落ち込むことはたくさんあるんだけど
でも、僕は今とても幸せなんだって感じてる。
「リア・・・?」
お茶の席で、ついついぼぅ・・・っとしてしまった僕に、心配そうな声をかけてくれた。
僕の、恋人・・・ユエ・マクドールさん。
3年前、南にあった赤月帝国と言う国で、解放戦争と呼ばれる戦争があった。
ユエさんはその帝国、現在はトラン共和国と呼ばれている国で、解放軍を率いて帝国と戦った英雄だった。
僕の今の苦しみなんか、辛いなんてとても言えないような経験をしたと言っていた。
目の前で大切な人が次々と死んでいくなんて、僕には考えるだけでも怖いのに。
「・・・ユエさん、ひとつ、聞いてもいいですか?」
「ん?」
「ユエさんは、どうして・・・お父さんを裏切ってまで、解放軍に参加したんですか?」
僕の突然の言葉に、ユエさんは酷く驚いた顔をして、僕に尋ね返した。
「・・・・いきなり、どうしたのリア?」
「え、あ・・・。ご、ごめんなさい。失礼なこと聞いて・・・」
ユエさんの顔をやっとまともに見て、僕は自分の失言に気付く。
けど、ユエさんは謝った僕の頭を撫でて、少し微笑みながら話してくれた。
「・・・そうだね、うん、リア。君になら話してもいいかもしれない」
-----***-----
正直、迷っていたんだ。
目の前で見せられた、帝国軍の非道な政略を見ても、まだ、心のどこかでは信じていたから。
テッド・・・親友の宿す紋章を手に入れる為だけに、軍を動かして僕らを陥れた国を、まだどこか信じていた。
自分が育った国を。
父が誇りを持って守る国を。
けれど、解放軍を立ち上げた女性・・・オデッサ・シルバーバーグ。彼女に会って、全てが変わった。
元は彼女も帝国貴族のひとりだったのだけれど、アキレスという反帝国運動に協力していた婚約者がいたらしい。
その彼を帝国兵に殺されて、彼女も反逆者として追われる身になったと言っていた。
最初は彼の弔い合戦だったらしいのだけれど、何時の間にか繰り返される帝国の非道な行為に、彼女の意思は民を守る事に変わっていった。
僕達はまだ迷っていたところだったのだけれど、王都を追われた僕達に帰るとこなど無かった。
そんな僕らに、彼女は言った。
「まだ、帝国軍に戻りたいの?」
僕達も、信じられないけれど、確かに目の前で見ていたから。
そんな時、アジトが帝国軍に見つかってしまった。
逃げ送れた幼い子供を守る為に、彼女は矢に倒れた。
「・・・・・それも、僕の目の前だった」
あの時が、紋章を宿してから始めての人の死に目だった。
死ぬ間際、彼女は自分の死を隠して欲しいと、そして僕に自分の跡を継いで欲しいと言って・・・事切れたんだ。
僕も、最初はリアと同じ。
自分の意志で戦争に参加した訳でもなかった。
けれど、帝国軍と戦ううちに、自分の信じるものが見えてきた。
正しい事ばかりではなかったけれど、誰を失っても、その道を違えないでと言われたから。
「・・・・それは、グレミオさんですか?」
「・・・うん。そうだね。僕達を庇って・・・死ぬとわかっていながら、そんな事を言ったんだ」
分厚い扉の向こう側で。
徐々にかすれていく声を、この耳で聞きながら。
傍によって抱きしめたかった。
触れていたかったのに、それさえも叶わず・・・・。
次に扉が開かれて見えたのは、グレミオの衣服と武器が転がった床だけで・・・。
親のように、兄のように包んでくれていた彼を、僕はそこで永遠に失ってしまった。
「・・・・ユエさん」
「でもねリア、僕は諦めなかった」
慰めてくれる仲間は沢山いた。
彼らがグレミオのために怒ってくれたから、僕はブラックルーンに操られた将軍も許す事が出来たのだと思う。
「・・・許せたんですか」
「僕にも、不思議だったんだけどね」
僕はそれからもその信じた道だけを真っ直ぐに見ていた。
自らの弱さに打ちひしがれるのは後で良いと、自らに言い聞かせて。
「辛い戦いで、失うものばかりで、けれど、その為に平和に近づいてるんだと言い聞かせて走り続けた」
そうして、ついに僕は父と対峙した。
一騎打ちになったのは、どうしてだったか今でもよく分からない。
それに、どうやって僕が父に勝てたのかも、分からないけれど。
あの時は只必死で、相手が父と言う事を一瞬忘れていた。
棍が身体に入った音がして、そこでやっと自分の犯した罪に気付いたけれど。
「父は、笑っていたんだ」
強くなったと、嬉しそうに。
そのまま事切れるまで傍にいたけれど、父の軍勢も僕ら解放軍も、もう誰も争おうとはしなかった。
父も信じていた道を貫いただけだったから。
父の道・・・バルバロッサ皇に忠誠を誓うと言った、父の道が間違っていたわけでもない。
ただ少しだけ、僕と、僕を信じてくれたみんなの願いの方が、それを上回っただけだったから。
-----***-----
「・・・・・今でも後悔することは、ありますか?」
話を聞き終わって、僕は、じっとユエさんを見ていた。
そんな辛い戦い、僕ならきっと耐えられない。
僕にはナナミちゃんがいるし、ジョウイだって生きてる。
大切だった人を全て無くしても、手に入れた平和は、本当に幸せな未来だったのか。
「・・・ないよ。後悔だけは、ひとつも」
「・・・・ない、んですか?」
「己の力不足に悔やむところは沢山あるけれどね。後悔だけは、ひとつも無い」
さらりと言ったユエに、僕はただ驚いた。
「でも、ユエさんの大切な人とか、もう会えないのに・・・」
「・・・・うん、でも。僕がこの紋章を宿している以上、これからは常に起り得る事だから」
世界に縛り付けられた存在。
真の紋章を宿す者に、与えられる不老の力。
「・・・・人は必ず死ぬ。形あるものは必ず壊れるようにね。僕も、いくら不死だからと言っていつかは死ぬんだろう」
「・・・・」
「それにね、彼らより大事なものを見つけることが出来たから・・・この出会いが運命だと言うのなら、僕は喜んで受け入れるよ」
過去の辛かった戦いの定めさえも。
昔は反発した、『運命』という言葉にも。
ユエさんは、それだけを受け入れてしまえるほど、大切なものを見つけたと言った。
「大切な、もの・・・・ですか?」
「うん。もう、手放せない・・・僕が果てる最期の時まで、傍に置いておきたいくらい」
大切なもの。
「リア」
カチャリ。
ユエさんが持っていた茶器が、机に置かれて高い音を立てる。
ユエさんの大切なものが何か考え込んでいた僕は、その音と呼ばれた声に顔を上げた。
正面に座っている僕を覗き見て、そっと・・・・そっと唇がかさなった。
「・・・・は・・・っぅ・・・!!?」
「この広い世界の中で、僕と君が天を魁する星に選ばれたことを、とても嬉しく思うよ」
たった一人しかいない君に出会えたことが、全て。
『運命』というカンタンな言葉で表せるものでもないけれど。
これが、『運命』以外の何だというのか。
「まさか、僕・・・?」
「・・・・リア。君が今までの僕を許しても良いと思えた、大切なものだから」
机越しに、ユエさんが立ち上がって身をかがめて、もう一度僕にキスをくれた。
僕は座ったままそれを受けるけど、僕の頬に添えられたユエさんの右手に、僕も左手を重ねて目を閉じた。
END
*謝*
Destiny... タイトル訳:運命
短い。わーい短い話書けるじゃんよ俺!!★(何)起承転結何もなし。起→結って感じですけど!(笑)
ユエリアは短編を書くのにいいキャラです。やっぱラブラブも楽しいですね!(笑)
あ、そうでしたそうでした。
8月24日のインテックスでこっそり売っていたあの本ですが、色々間違いが発覚(汗)
やっぱり1日で書いたものを印刷なんてするもんじゃないです!!
リアの年が、あれじゃ16歳になってしまいますがな。
もし、掛たちが10月も出てまた置いてくれると言ってくれたら、訂正版で出します。(涙)
そして新作も出せたら・・・・。あの話の続きで、リアが嫉妬します。(笑)
サイトにupしちゃうか、インテにて出すかはまだ未定ですが。
うーん、後書きじゃなくて告知のようになってしまった・・・・。もう終わろう。(・・・) それではまた!
斎藤千夏 030906_up!