※注意!※
まだ本番無いけどちょいと下品?なお話なので、 苦手な方は閲覧をお控え下さる様お願いいたします!
*愛してると言ってみろ*
真っ白な原稿用紙を前に、小柄な男が頭を抱えていた。
髪はぼさぼさ、家着だからとしわしわの寄れたYシャツのボタンは三つほど開いている。
普段生活に困るほど視力が悪い訳でもないけれど、紙面に向かう時は癖のようにかけている黒縁のダサいメガネ。
「うーむ・・・・ネタ、尽きた」
握っていたペンを転がしたところで、背後からドカンとかボコンとかとてつもない轟音が響いた。
「チャオ。邪魔するぜ綱吉」
「普通に入って来いよ頼むから!」
紙に埋もれた狭い部屋の中へ真っ黒なスーツに身を包んだ真っ黒い怪しい男がずかずかと入り込んでくる。
とてつもなく怪しくても取り合えず顔見知りなので、借金取りとかそういう怖いおニイさんではない。
「インターホンって便利なものがあるだろこの時代にはさあ!」
「お前、客が俺だと分かれば出て来ねぇだろ」
「・・・・・」
「扉壊されたくなかったらいい加減に合鍵くらい寄越せ」
「どうせ犯罪まがいのヘアピン技術で開けるお前に渡したって無駄だろ・・・」
蹴飛ばされた扉は果たしてまだ使用可能なのかとてつもなく不安だが、鍵は勿論、きちんとチェーンまでかけられている扉は取り合えず無事なようだ。
「で、どうだ」
「何が?」
「この俺が訪ねて来たんだぞ。素直にとっとと出しやがれ、cielo(チェーロ)先生?」
「・・・・ええと」
今更だけれども、どこまでもどん臭そうな小柄な男は本名沢田綱吉。
もともとはハードボイルド作家としてそこそこ売れていたしがないもの書きだ。
色んな会合とか慰労会などで顔を出すと取り合えずイメージとは真逆だと驚かれるが、お堅い刑事とかマフィアとか、ヤのつく職業の方だとか、そういう硬い世界を書いては狭い世界で『沢田先生』と呼ばれて生きていたというのに。
「リボーンやっぱり無茶だよ。その・・・BLなんてさ」
お堅い世界だからこそなのか妄想力いっぱいの夢ある少女たちの目に止まり、二次創作と言われる界隈でジャンルが確立してしまった。
これに目をつけたのが、デビュー当初から綱吉の担当であるリボーンだ。
元々原作でもそれっぽいと囁かれているらしい俺の文体が向いているかもしれないと『おまえちょっとBLも書いてみろ』なんて軽いノリで書かされるハメになった。
恥ずかしながらも売れ行きは上々。
出版社は変わっていないが雑誌も変えたし恥ずかしいので勿論ペンネームもcielo(チェーロ/イタリア語で空)とリボーンに名付けられて変えているけれど、結局「沢田綱吉=cielo」だと知っている人は知ってる・・・らしい。
リボーンに言わせれば、『この俺様が編集してんだ売れないはずがねぇ』と豪語するのだけれども。
「売れてんだろ。それも供給が足りてねぇ現状の何が不満だ?」
「解れよ、男なら!この世界に居たくないの察しろ・・・!ってかね、話を書くにしてもさ、もうネタがね」
今まで幾つか書かされて書いてはきたが、知識の乏しいアレな世界の話だ。そろそろネタ切れしてきた。
「だったらまた取材に行くか?」
「二丁目連れまわすのは勘弁。絶対嫌だ。死んでも行かない!」
BL話を書けと命令された時、そんな開けちゃいけない扉みたいなコアな世界を書くのは嫌だと拒否したところ、現実のコアな場所へ連れて行かれてしまったのだ。
「ケツ撫でられたりとか抱きしめられたりとか散々な目に合ったんだ!お前には分からないよ!もう二度と行くもんか!!」
「あぁ・・・だがな、確かにお前もモテていたが、俺だって負けちゃいねぇぞ?」
「そうだけど!お前と俺じゃ擦り寄ってくる人種が違うんだよ!!」
ブラックスーツを着こなして中折れ帽を粋に被ったリボーン様は、その外見からものすごくモテる。
普段町を歩いていても逆ナンなんて当たり前。モデルやらなんやらのスカウターもまるで釣りのように拾ってくるモテ男だ。
あの日も、夜の街のお姉さん方は勿論、ソッチの業界でも男にモテていたが、リボーンに纏わり付いていたのは所謂『受』側の男たちで。
「俺は!お前と違って!ムサくてゴツくてガチのムチ男にばっかり構われるんだよ!男として嫌だろ普通!!」
「・・・あぁ」
あの日のことを思い出したのか、どこか遠い目をしてみせたリボーン。
同じ男に迫られるのでもまだ細身で綺麗な人たちにしなだれかかられるのとは意味が違うのだ。
「ちくしょー・・・なんでかなぁ俺も男なのにさ!」
「は、当然だぞ。俺様は格好良いからな」
「・・・そうですねー。ったく、自分で言うかふつー・・・」
そもそもなんでリボーンが地味な編集なんてやっているのか。モデルとして活躍した方が売れるに決まってるのに。
目の前の真っ白のままの原稿は、結局全くといっていいほど進まない。
もうこれを機会にBLなんて業界から足を洗いたかった綱吉だが、考えに没頭するあまり、真後ろへにじり寄ってきた担当編集の魔の手に気付かなかった。
椅子に座ったままの綱吉を、がばりと後ろから羽交い絞めされるように腕を回される。
「ツーナ」
「ぅわ!な、なんだよ・・・?」
妙に甘ったるい呼び声に恐怖を感じて背筋が凍るが、椅子と固定されたようにがっちり絞められて逃げ出せない。
「俺様は完璧だからな。お前のことだ。そろそろそんなこと言い出すかと思ってイイモン仕入れてきたぞ」
ガサリと何処から出したか謎な真っ黒いビニール袋を、膝の上に落とされる。
「・・・俺、無理・・・」
「まぁ、見てみろ」
また前みたいに薔○族とかソッチ系のDVDとかそういうのだろうと思った。
ちなみに、以前無理やり見せられた時は吐いた。あれはノンケのノーマル人間にはキツイ所業だった。
妥協は許さねぇとか意味不明なことを言いながら初心者にかなり濃いのを用意しやがったんだ。
BL世界というのはやはり所詮捏造世界で、主に女の子が読むものだから、毛深いとか汚いとかグロいとか、そんなものからかけ離れている。
実際にありえないほどきらきらとした綺麗な世界を想像してきゃーきゃー言ってるだけだ。
だから、モノホンの世界を覗き込む気はないと突っぱねれば、『俺は同じ過ちは繰り返さねぇ主義だ』と返された。
(ちなみに、前回のDVDはリボーンも一緒に見ていた。意外に平気そうだった)
「・・・DVDとかだったら叩き割る」
「ま、見てのオタノシミだな」
がさがさとうるさい袋を、原稿用紙を広げたままの机の上で逆さまにされる。
中からばらばらと出てきたのは、なんともまぁ何処で揃えたのか、アレやコレやの18禁グッズだった。
「な、なんじゃこりゃ!」
「しっかり見てさわって感じろよ?ちなみに全て男用だ。用途は色々だがな」
「こ、こんなの・・・!」
確かに前のものよりは資料として使えるかもしれない。でも・・・なんだかものすごく居た堪れない。
「俺、コレ処分するまで絶対この家で死にたくない。遺品整理とかされたら死んでても生き返りそう・・・」
「そりゃーいい。死ぬ前にとっとと原稿上げやがれ」
原稿用紙の上に散らばったそれらを眺めて・・・手にとって見ても、はてさて使用法がわからない。
もの書きとして好奇心は人一倍あるから、初めて触る大人の玩具とかいう道具に興味はあるのだけれども。
「どうした?お前の想像力を膨らませてみろよ」
「あ、いやでも・・・。こんなの使ったことないし」
ローター?にしては紐とか色々ついてたり、バイブ・・・?にしてはやけに細かったり。
そもそも何のために使うのか分からないゴムで出来たわっかや白くて変な形をしたものまで。
「コレぐらいは分かるだろ・・・・って、あぁ。なんせ女とも経験が無いチェリーだったなお前」
「うううるさいな!それに関しては殆どお前のせいだろ!?」
綱吉が惚れた女性は全て、いつでも後ろに立っているこの男に奪われていくのだ。
女の子の方から綱吉にアピールしてきても、数日後にはこの男の腕に絡まってうっとりしているのを見ると本当にげんなりする。
それでもいつも、長続きしないのだが。
「あぁ?たりめぇだ。ソイツが誰でも俺のモンに手ぇ出すの黙って見てられる訳ねーだろ」
後ろから羽交い絞めされたまま、首の辺りの薄い皮膚にちゅっちゅと唇を落とされる。
「誰がお前のモンだ?!」
とにかく逃れようとやたら綺麗な顔を手のひらで押しのけるが、力では純粋に敵わない。
「くくく・・・可愛いなお前」
「あ、ありえねぇ・・・!」
そのくせぺろりと手のひらを舐められて、くすぐったさに慌てて逃れる。
女性と長続きしない理由はまさにコレだ。この完璧な男はどうして、その性癖に問題アリなのだ。
女性との関係はそれこそウン十ともあるらしいけれども、彼女が出来たと思ったらいつの間にか綱吉の隣に戻ってきていて絡んでくる。その時付き合ってた相手はと聞けば、別れたと返って来るのはもういつものことで。
「もう、いい加減彼女絞れよ。それでケッコンしてしまえ」
「・・・ツナ、問題だ。俺とお前の関係は?」
「編集と作家だろ」
「その前は?」
「ご近所さん、で幼馴染」
「戻り過ぎだ。その後は?」
「・・・・・・・・・・・・愛人?」
「疑問系にするならせめて恋人って言えよドルチェッツァ」
「誰がいつお前の恋人になったァ!?」
手の中の小型バイブを投げつけてやる。
顔を狙ったはずなのに、拘束を解いたリボーンは軽くそれを受け止めて投げキッスで返してきた。
「いい加減真実を受け入れて愛の言葉くらい囁いてみろってんだダメツナめ。・・・ま、そんなカタい所もイイんだが?」
「そもそも、こんなもの持って来られてもどうしろっていうんだよ」
「スルーか。・・・まぁ、使ってみればいいだろ」
「誰が・・・?」
「そりゃあなぁ?使用感まで知りたいなら手伝ってやるが?」
にじり寄って来たえらく整った顔のいい男。
びっくりするほどものすごい美人なんだけど、どうしてこれが男なんだろう。
そしてどうして、こんな男と関係を持ってしまったんだろうと。
後悔って言葉は本当に上手い。後から悔やんでも確かにどうにもならない。
・・・と、そこまで考えて。
「どうせネタにするならさ、使用感も勿論だけど・・・『攻』の立場で使ってみないと分からないコトもあると思うんだよね」
「・・・ほう?勉強熱心でイイこった。・・・で?」
くるりと座っている椅子を回して、正面からリボーンを見上げる。
仁王立ちの立ち姿は男!って感じのカッコイイものだけど。
たまには『受』の立場も体験してみろってんだ。
「試させて・・・くれるよね?」
想像したら寒気が来るけれど、意外と活用的な上目遣いと小首傾げ。
ほんの一瞬思案したリボーンは、何とも言えない雰囲気で帽子を脱いで綱吉に唇を寄せながら『ひとつ条件を飲むならいいぞ』と快諾したのだった。
続・・・かないかも!
⊂謝⊃
何だろうコレ何だろう(笑)
こういうおもちゃネタは今までの活動ジャンル的にムリなお話だったので、ものすごく新鮮!
元ネタは某インテで某お方と盛り上がってしまったリボツナ話からなのですが、この後の続きはどうしようか本気で悩むところです。(笑)
だってなぁ・・あの会話の続きだと、これ先生が攻められ・・・げふごふん。
・・・うん、このままうやむやにして終わっちゃえ。(逃)
自分的ネタ健忘録: 「ドルチェッツァ」とは、甘味。甘いお菓子とかそういう意味かな?「ハニー」の代用品(笑)
参考にさせてもらったサイト様は「イタリア的恋人の呼び方」とググれば出てきます。(笑)
斎藤千夏* 2010/06/07 up!