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A*H


Angel Halo 5

AH5

ジャンル:幻水坊主/ゼロ×アーティエ
発刊:2008年1月13日
仕様:A5コピー(表紙カラー)
頁数:32P
価格:¥300


AHシリーズ第7弾!
志願兵の入軍試合会場へ現れた一人の男。ゼロと対等に戦うその男は何故か、アーティエの出生と過去を知っていて、元の場所へとアーティエを連れ戻そうとするが・・・!?

またしても新キャラ登場です。
ハイランドメンバーも本当に平和な頭の作りをしているようです。(笑)



▼以下おためし

間章 逃亡者

静かな夜の空気が室内を優しく揺らし、窓辺に座って本を開く彼女の髪を撫ぜて行く。
高貴な誂えの家具や絨毯は、この部屋の主の地位が高いことを証明することに苦もなく応えるだろう。
柔らかな肢体、優しげな表情。
白磁の肌に、漆黒の長い黒髪・・・。
滅多にいないであろう美しい容貌をした女性の名をジル・ブライト。
ハイランド王国第一皇女にして、 現在は国の母でもある。
天は彼女に一も二も与えた。
けれど。
「・・・あぁ、なんて素晴らしいお話なのかしら。殿方同士の恋愛・・・なんて素敵な響きなのでしょう」
唯一つ。
その性格さえ除けば。であるが。
「それにしても、この『アーティ』と呼ばれている少年は・・・どこかで」
記憶を辿って、ふと昔、幼い頃の旦那の横に居た小さな影を思い出す。
柔らかそうな薄茶の髪は太陽の光を吸い込んで金色に輝いて、零れ落ちそうな瞳は優しげな春の緑を思わせるエメラルド。
現在は、その右手に宿している紋章の為にどんな作用が働いたのか分からないが、夫であるジョウイと瞳の色を片方ずつ分け合って右目が夫の蒼に変わっているが。
それでも、その愛らしさは変わらない。いや寧ろ神秘性を増したお陰か、その可愛らしさを更に引き立たせ、もはや天使かと見紛うほどだ。
華奢としか言えないような小さな身体で、その半分はあろう巨大なトンファーを振り回しながら戦う姿。
それをジルは『アーティ』とジョウイが少年兵であった頃、何度か目にしたことがあった。
「そういえば、あの頃のお兄様はどこか変だったわね。元々変な人だったけれども・・・何か」
そう、何か。
異常な執着とでも言えば良いのか。
王族としての娯楽など全く興味もなかったはずの兄が、『アーティ』とジョウイが入隊した年から毎度欠かさず出席するようになった。
視線の先にはいつも、少女と見紛うような容姿をした、綺麗な少年。
少年の方も、兄の視線には気付いていて、返事のように、にっこりとした笑顔を浮かべていた。
「知り合いだったのかしら?・・・いいえ、でも、あの容姿は・・・」
見覚えが。
と、記憶を探ろうとしていたジルの部屋に、突然飛び込んできた影が一つ。
「ジル!た、たたた大変だ・・・!!」
「あら?・・・珍しいですわね。貴方がこんな時間に妻の部屋を訪れるなんて。そんなに我慢出来なかったのですか?」
ジルの言葉に含まれた意味に気付いたジョウイは、瞬間顔を真っ赤に染めたが、慌てて首を振る。
「ち、違う!!ちがーう!そうじゃない!そうじゃなくて、大変なんだ!」
鬼気迫る表情・・・というか、どこか怯えた様子の夫の表情は、ジルが最も好む類の顔である。
一応美人の部類に入るだろう夫の、その儚げな顔が好きで結婚したのだから。
・・・勿論そんなことジョウイ本人は知らないが。
「どうしたというのです?」
手元の薄っぺらい本を大事そうに近くの机に置いて、ジョウイの返事を待つ。
ジルの手から離れた本に一瞬目を奪われたジョウイだったが、やがて小さな声を絞り出すようにして答えた。
「地下に閉じ込めていた獣が・・・檻を壊して逃げ出したらしい」
檻というからには一応堅固に作ってあるはずだ。
それを壊して逃げ出した獣は、当たり前だが厄介なものだろう。
「ジル・・・一体何を飼っていたんだい?兵士達が真っ青になって探しているんだが・・・どうも城下街に下りたらしくて・・・でも、様子が変なんだ」
そもそも、獣が街を徘徊していれば何かしら騒ぎになりそうだが、今の所そんな話は一切あがってこない。
何が逃げたのかも分からない状況で不安で堪らないといったジョウイの蒼褪めた頬を撫で、ジルは何事もなかったかのように柔らかく囁いた。
「確かに放置すると厄介な生き物ですわ。仕方ありません・・・迎えに行きましょうか」
「迎えに・・・って、捕まえに、じゃなくて?というか、どこに居るのかわかるのかい?」
驚きに見開かれたジョウイの表情に、満足そうな表情を浮かべてジルは微笑む。
その笑み自体は思わず見とれてしまうほどの綺麗な微笑みであったけれど、ジョウイはその笑みの後ろに隠された何かに怯えたように身をすくめる。
「えぇ。・・・きっと、あそこしかありませんわ。あぁ、でも、脱走するくらいですもの・・・あの情報は確かなようね」
そんな夫の肌触りの良い頬を撫でつつ、ジルはきっと大騒ぎになっているだろう目的地を思い、くすくすと抑え切れない笑い声を零した。

Next Act.15



気になりましたらどうぞ!
ぜひ手にとってやってみてくださいね!!