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黒い未来 い過去 鮮の幸せ

KUROIASHITA SHIROIKINOU SENKETUNOSHIAWASE

ジャンル:復活/骸×綱吉
発刊:2007年09月23日
仕様:FCB5オフ※成人指定
頁数:64P
価格:¥700



あさと様との漫画+小説合同誌。
綱吉くんを好き過ぎていっちゃうところまで暴走する骸さんがテーマの本です。
解釈は間違っちゃいないよ! (笑)
あさとさま漫画、斎藤小説です。お話は繋がってませんが、どっちもドシリアス。
小説は雰囲気「骸ツナ←リボ」
漫画の方は「骸ツナ←雲雀」だそうです。
死にネタ、流血、暴力表現、性的描写アリ。・・・の、注意書きだらけな危険本デス。(苦笑)



▼以下おためし (文)



(略)


***


「珍しいな、お前が此処に来るなんて」
夜の帳が降り切った深夜、闇に紛れるように訪れた綱吉の部屋には先客が居た。
紛れた闇よりもなお濃い漆黒に身体を融かし、闇色のスーツを纏ったまだ幼い少年が歩み寄ってくる。
「・・・アルコバレーノ、貴方ですか」
綱吉との、出逢った頃と変わらない関係性は生活までも同じく、どうやら彼もまたこの部屋に寝起きしている様子だった。
だからこそのプライベートルームで、普段見る彼と比べて幾許か寛いでいるようだが、全くと言っていいほど隙はない。
リボーンは骸の腕に抱えられた意識のない綱吉に一瞬目を細め、顎をしゃくった。
「それ、ご丁寧にも返しに来たのか?」
「・・・彼はものではありませんよ」
返すも何も、借りた覚えすらない。
「偶然にも僕の仕事場に飛び込んで来て下さったので。任務完了の報告ついでに送って来ました」
バサリと机に投げられた紙の束には、壊滅した組の勢力範囲、殲滅した人数や残された遺族の家族構成、手掛けていた商売に、裏金の行方までそれはもう事細かに記されている報告書だ。
更に大本になるだろうイタリアンマフィアの粗方な詳細まで追加してある辺り、普通一人で出来る量の仕事ではない。
けれども、骸はそれをこなす。
皮肉にも、毎回頼んでもいないおまけまで付けてあからさまに任務を完了させる。
「今回もしょぼい仕事だったみてーだな」
「いえ、そうでもありませんでしたよ」
綱吉を、近くのソファーにそっと降ろして、伏せた瞳にかかる前髪をそっと避ける。
「今回は少し大きな仕事になりました。街が一つ消えましたしね・・・危うく、僕も命を落としかけました」
「ほう」
「ですが、彼のお陰で命を救われましたよ」
そこまで言って、ふと骸はリボーンを見つめる。見つめ返す漆黒は、何の感情も移さないガラス玉のようだ。何も映らない瞳・・けれど、確信していることがある。
「誰が僕の命を狙おうと、そう易々と渡せるほど軽い命ではないのです」
「そうか」
「仲間同士の殺人は裏切り行為に等しい。だからこそ、仕事中のミスで命を落とす結果が最も好ましい」
「何が言いてーんだ?」
「誰でも考え付くシナリオ・・・と言いたい所ですけれど。知らなかったんですね、彼は」
安らかな呼吸を繰り返す綱吉の頬を撫で、薄く開いた唇をゆっくりと指先でなぞる。散々に触れたその場所は普段より赤みを帯びて艶かしい・・・が、ぞくりとしたのは快感ではなく悪寒にだ。
「・・・アルコバレーノ。少しは控えなさい。やっと眠ったのに。起きてしまいますよ」
「うるせぇ」
リボーンの、骸に対する感情は・・・殺意以外のなにものでもない。水牢から出てきた直後が一番酷かった・・・いや、今この瞬間の方が勝るか。
どれだけ巧妙に隠しても、他の誰が気付かなくとも、輪廻を巡った骸には久しい感覚で、負の感情には敏感なのだ。だから、あの時も今もすぐに気付いた。
「こいつは俺の殺気じゃ起きねーよ。・・・なんせ長い付き合いだからな」
前は他の守護者たちも居た手前、あからさまなものでもなかったが、今の発言からするに今は隠そうともしていないようだが。
「子供らしく自慢話ですか?」
「てめえも煽るな。今の俺は機嫌がわりーんだ。加減してやれねえ」
「おやおや物騒なことを」
思念と殺気が渦巻いたような部屋の中でも、綱吉は深い眠りに落ちたまま目を覚まさない。初心者に無理をさせたかと、幾許か甘い笑みを浮かべた骸に、カチャリと向けられた銃口。
「何のつもりですか?」
音を立てて向けられた以上、これはただの威嚇だ。リボーンはそうと気付かれぬ内に相手を殺せる腕を持っているはずだから。
「触んな。・・・帰れ」
絞り出すように呟かれた言葉の色に、これ以上の長居は危険だと理解する。彼が本気なら、避ける間もなく骸は命を落とすだろう。
「・・・そうですね。報告も終わりましたし。僕はこれで」
離れがたい体温をそっと離して、入ってきた窓へと向かう。背中に感じる視線は、嫌悪と憎悪と嫉妬・・・と言った所か。
大空に憧れるのは、それを染めあげる天候の所持者・守護者だけでなく、それに抱かれる虹の子供も含まれていたらしい。
「・・・愛され過ぎるのも困りものですね」
次に会えるのはいつになるかわからないけれど、骸が付けた一点の穢れに他の守護者たちが気付かないはずがない。
染み一つないまっさらな布を穢すのは躊躇うけれど、ただの一点でも汚れていたら。誰のものにもならなかったそれが、誰かの腕で鳴いたと知れば。
「一波乱起こりそうですね。・・少し早い気もしますが、打てる手は打っておきますか」
見上げた月は明るい。すっかり雨の上がった空気は少し冷たく、清涼で心地良かった。ざわりと、基地周りの木々が揺れる。雲が一瞬月光を遮り、次の瞬間にはもう。
そこに、骸の姿はなかった。


***




続きは買ってからのお楽しみv(笑)