A*H


Yo bairo

JOBAIRO

ジャンル:復活/リボーン×綱吉10年後くらい
発刊:2008年06月22日(全国大会)
仕様:A6コピー
頁数:16P
価格:¥100



好き過ぎて書けなかった先生ツナ本ようやく出せました。多分10年後くらいのお話です。
リボーンの思うとおりの世界になるように周りの全てを躍らせて支配していたはずなのに、気が付けばツナへの想いに踊らされていることに葛藤する・・・とまあそんな感じです。とりあえずまぁ、ジョバイロの歌詞聴いてください!(説明する気ないだろ/笑)
雰囲気的にはリボ→ツナです。
先生の葛藤です。(萌)
あと、読み手様にケンカ売ってる(オイ)くらい文字が小さいのでご注意を(笑)






▼以下おためし (文)





この世に産まれたその日から、その瞬間から俺に出来ないことは無かった。
知らないことも何一つありはしなかった。
生きる上での知識、教養はすべて習う前からこの頭に、身体に与えられていて、そうと気付いた瞬間絶望した。生まれた瞬間、生きるための理由を失ったのだ。
だが、そんな俺でも『人間』である以上、『生きる』ことに関しては貪欲だった。
俺は生きる為、与えられた仕事を遂行する。そこに感情はいらないんだろう。ただ、完璧に標的を抹殺する腕さえあれば。
仕方なく、俺はそれを甘受した。選ぶことは出来なかった。
だからせめて、このつまらない世界を生き抜くために、俺は俺の周りに流れる時間すべてを操る術を手に入れようと考えた。
俺の思う通りに人を、世界を、時間を動かしていくシナリオ≠描こうと。
ただそれだけだけれども、こんな世界の中、何も目標がないよりは楽しめた。

初めはそう。
生きる理由と、ただ自分が楽しむためのシナリオ≠セったはずなのだ。
「お前がそう、望んだんだろう?リボーン」
柔らかな声音で、けれど呆れたように俺の名を呼ぶのは。
「ツナ・・・そうじゃねーんだ。俺は」


いつからだろうか。
気ままに描いたシナリオ≠ナ、他人を操り踊らせていた俺が。


「・・・俺は」
自分で描いたはずのそれ≠ノ踊らされていたのは。








『五感で感じる違和感』





見上げた空は闇に黒く染まり、重苦しい雲に覆われ、星の瞬きなど見えやしない。
月明かりすらない夜空だけれど、俺としてはこちらの方が心地良い。纏わりつくような闇がこの身を包めば包むほど、この世の膿に汚れきった俺には落ち着くのだ。
「リボーン」
似合わない、俺に与えられた名を呼ぶ声。それでも振り返らずに俺はただ空を見上げる。
「・・・明かり位付けなさいな。今夜は月も無いのね。何にも見えないわ」
続きのシャワールームから出てきた女の声が静かな部屋に響く。開け放たれた窓の外から入り込む微かな街灯の灯かりを頼りに、その声は俺の真後ろまで移動した。「何を見ていたの?」
甘えるように擦り寄る体温は悪くない。イタリアに戻ってもう何年か。片手では数えられない夜の相手は何も後ろの女だけではないけれど。
「薔薇の匂いがするな」
「貴方のくれた大輪の薔薇よ。飾ってもいいのだけれど、枯れる前の綺麗なうちにこんな風に使うのも悪くはないでしょう?」
「・・・そうか」
啄ばむようなキスが降りてくる。女のしたいようにさせながら、同じく振り降りる言葉の羅列を聞き流す。
「貴方は逢う度綺麗な花束をくれるわ。それも決まっていつも、真っ赤なバラの花束」
「それがどうかしたか?」
「薔薇の花に・・・いいえ、この香りに意味があるのかしらと思っただけよ」
くすくすと笑う声に、その柔らかな身体をシーツへ縫い付ける。
湯で温められた肌はそれだけで暖かい。他人から触れられるのは嫌いだが、自分から触れるなら悪くない。
「・・・寂しい人ね」
「・・・何だ」
「こんな夜を過ごす相手は別に私じゃなくてもいいのでしょう?」
真っ暗な空。雨まで降り出しそうな、重々しい夜空。
確かに、闇は好きだけれど、こんな空が好きな訳じゃない。暗闇は心地良いけれど、あの瞬く星も柔らかな月の光も嫌いじゃなくなったのはいつからだろう。
いつも側に他人がいる・・・それが苦痛でなく、当たり前になったのは。
「この香りに染めた相手なら、誰でもいいの?」
「・・・お前だけだ」
「あら嬉しい。・・・でもそれは私が『理解者』だからだわ。でも、貴方が本当に欲しいのは、『私』じゃないでしょう?」
もう黙れと言うように、唇を塞ぐ。目の前の愛人は立場を弁える賢い女だが、如何せん頭が回り過ぎる節もある。
それでもまあ、馬鹿よりは良い。元々賢い女は嫌いじゃない。
「リボーン。好きな人。貴方には大事な人は・・・いないの?」
俺に、そんな感情はない。
流石に、声には出さなかった。『誰かがいい』わけじゃない。『誰でもいい』のだなんて。
目の前の女がもし俺を裏切り、俺の描くシナリオ≠狂わせるように踊るのであれば、その役は問答無用で奪い取れる程度の執着だ。この暖かな体温を奪ってしまうことなど、呼吸をするのと同じ程度にしか感じない。
幾ら気に入った女でも。どれだけ求め合った相手だとしても。
人を殺すことに、躊躇いは感じない。他人に対しての、執着など。
「・・・淋しい人ね」
言われた意味はわからない。そんな感情など、俺には元からないのだ。
必要ないから、無いのだ。・・・それなのに。
暖かな体から香る匂い、舌で味わう肌、指先で触れる温度、声、柔らかく笑う瞳。
嫌いなものではないのに、感じるのは違和感。
もう一度重なろうとする唇に目を閉じれば、瞼の裏に浮かんだのは。
振り切るように部屋を後にしたあの時の。
もう見慣れてしまった――苦笑のような――どこか辛そうな顔で俺の名を呼ぶ教え子の顔だった。


***




続きは買ってからのお楽しみv(笑)