A*H
存在理由2-raison d'etre-
RE-ZONDE-TORU 2
ジャンル:復活/リボコロツナ+ムクツナ(パラレル)
発刊:2010年10月31日
仕様:B6コピー※成人指定
頁数:60P
価格:¥600
設定がややこしいパラレル小説第二段です。
今回は、前回の補足版のようなものを書こうと思っていたのですが、意外に骸さんが奮闘しました。
そしたらば前回を読んでなくても分かるようなお話になったかと思います。(そこらへんは雲雀さんのせいかもしれませんが)
前回に出てきた人は大抵出演しました。それに新キャラ追加・・・そんな感じでお読みください。
こんな表紙ですが(笑)それでも結局一番オイシイとこ持っていくのは先生なんだよなぁ・・・。(笑)
でもあんまり先生が酷い人になってくれなくてちょっと残念・・・。
勿論コロネロの出番もありますから大丈夫です!出演率はコロネロの方が多いと思うんだがどうだろう。
▼以下おためし (文) ※前作のネタバレになります。OKな方のみどうぞー!
◆◆◆◆◆
「かあさん・・・とうさん・・・いたいよ、どこ?・・・どこにいるの?」
コンクリートが敷き詰められただけの薄暗い部屋の中は、息が白く凍るほど寒い。そこに傷だらけの少年が涙を流し震えながらすすり泣いていた。
身体中の火傷や裂傷は爆発の衝撃を物語る。肌は裂け、骨が数箇所折れているところもあったが、おざなりな手当てしかされていなかった。少年の身体は炎に嬲られた火傷がもっとも酷く、止まらない血を流しながらもその表情に痛みは浮かんでいない。おそらく、感覚は既に麻痺しているのだろう。薄く開いている目からは涙が零れるものの、一時的なショックで視力を奪われていた。
このまま放っておけばいずれこの子供は死ぬ。元々の依頼は完全なる抹殺であるが、彼は面白い余興を思いついた。
「・・・子供だけは確実に殺せとの指示でしたけれども、従う義理もない。この子は僕が貰い受けましょう」
細い体つきの子供を抱き上げる。冷え切った肌に人の体温は熱く感じたのか、意識を朦朧とさせていた子供の体がびくりと震えた。
「聞こえていますか?貴方、名前は?」
「・・・あ、ぁ・・・だ、れ?・・・やだ、帰りたい、帰らせて・・・」
歯の根が噛み合わないほど震える身体からか細く零れ落ちるのは、彼も聞き覚えのある言語であった。小さく口の端で笑みを浮かべた彼は言語をイタリア語から切り替えて日本語で出来る限り優しく問いかけてみせる。
「ジャッポーネでしたね。ならば・・・『貴方の名前は?』」
「だ、れ・・・?」
「『僕は骸です。・・・貴方の名前は?』」
「・・ぁ・・・つ、な・・・」
「『つな』?・・・そう、ツナ君ですか。十代目候補、沢田綱吉君。やはり間違いないようですね」
少々面白くなさそうに溜息を吐いて、それでも、壊れかけた小さな身体を腕に抱えなおした。
資料では十三歳にはなっていたはずだ。それにしては幼い風体の子供であるが、抱え上げる彼・・・骸と名乗った彼もまた、年の頃はそう変わりはない少年である。しかしながら、体格はまるで大人と子供。
ここまで来ればもう人種の差というわけでもなさそうだ。
「それにしても軽い。餌はしっかり与えないといけませんかね・・・『気に入りましたよ、ツナ君』」
「・・・?・・」
抵抗する気力もない、今にも消えそうなか細い命の火を拾ったのは彼にとっても気まぐれである。
けれど、その気まぐれでこの少年・・・命を狙われ、両親共に襲われて死ぬところであった『沢田綱吉』が生き残る唯一の道でもあった。「しかし、記憶は邪魔です。・・・君には一度死んで貰いましょうか。そして僕のかわいいお人形になって下さいね。『ツナ君』」
薄暗い部屋に、革靴の音が響く。
血に濡れた床はそのまま、誰の目にも触れることはなかった。
◆◆◆◆◆
(略)
◇◇◆◇◇
「まったくお前らは・・・。今日は泊まるつもりで行ったのに、やっぱり帰ることになっちゃったじゃないか」
「それはツナの自業自得だ」
「お前は俺たちのモノなんだろう。他人にばっかり構ってるからだぜコラ」
「・・・・まったくもう」
誰がいようと人の目など全く気にしないリボーンのセクハラや、コロネロのスキンシップに耐えかねた綱吉は、これ以上手を出されて動けなくなる前にと慌ててマンションへ逃げ帰って来たところである。
辿り着くなりソファーの上で前から後ろから挟まれて、髪や頬、手の指先まで楽しそうに唇で触れていく二人を相手に振り払うこともできず、結局されるがままで身動きすら取れない。本気で抵抗してもこの様子だと素直に放してくれる気はないだろうが。
「・・・なんだ?そんなに寂しかったのか」
「・・・あぁ」
「もっとこっち見ろ。俺を呼べ」
「俺の名前もな。お前の声、聞かせろ」
本格的に手を出してくる気はまだないのか、可愛らしい口付けと接触で顔を摺り寄せてくる二人は、まるで大型犬と猫科の猛獣だ。
飼い主に構って欲しくてぺろぺろと舐めてくる仕草に似ていて、やはり無碍には出来ない。くすくすと笑いながら二人の柔らかい髪を撫でてやれば、ペット扱いされたことに気付いたのだろうか。きらりと光ったリボーンの目がこれ幸いと綱吉のよれたネクタイを奪った。
三人しかいないこのマンションの中なら、基本抵抗しない綱吉である。されるがままに両の手首を縛られてしまった。
「おい、リボーン、お前何を」
「黙ってろ。・・・そろそろお前にも機会与えてやんねーとな。初めはからかういいネタだったが、いい加減見てて苛々すんぞ」
そう言いながらもリボーンの手は止まらず、綱吉のカッターシャツを軽快に剥いてゆく。
「・・・って、え?リボ、まさか、いきなり三人で・・?」
「俺様が直々に教えてやるぞ。・・・ねっちょりな」
「待・・・ッん、ぅ!」
噛み付くように重なったリボーンの唇は、容赦なく綱吉のそれを割り開き、微かな抵抗などものともせずに逃げる舌を絡め取る。
呼吸を突然奪われた綱吉はリボーンが与える刺激に必死で追いつくことしか出来ず、その間に縛られた腕は、綱吉が背凭れにしていたコロネロに引き渡された。
万歳のような格好で固定されて、逃げようにも背中にはコロネロの堅い胸板。腰も太い脚の上に乗り上げている状態で、リボーンが口付けたまま仰向けの綱吉の上に乗り上げてくる。
とはいえ狭いソファーの上だ。それだけでも身を捩ることも困難で、逃げようとした身体がずり落ちそうになったところをコロネロの腕に支えられるように再び固定された。
「で?・・・お前は見てるだけか?コロネロ」
「・・・っくそったれ」
息を乱された綱吉は、リボーンの舌技で体温を跳ね上げられてしまったようで、僅かに唇が開放されてもそこから零れるのは苦しそうな熱い吐息だけ。
綱吉とは舌を絡めるキスまでようやく進めたのだけれど、この先はどうにも箍(たが)が外れてしまいそうで・・・つまりは手加減を忘れて壊してしまいそうで、手が出せないでいたのだ。
微かに震える綱吉の表情まではコロネロから見えないが、膝の上で抱きかかえた愛しい綱吉の身体を欲しいかと聞かれれば、是と答えるしかない。
「・・・いいのか?」
「・・・も、そういうのは・・・訊かれたら余計に恥ずかしいんだって言っただろ・・・」
「野暮だなバカネロ。何を冷静なフリしてんだ?こんな機会くらいがっついてみせろよ」
「ちょっとお前らな・・・。いや、もういいけど。・・・手加減はしろよ」
職を持たない二人と違って、綱吉は明日もばっちり仕事の予定だ。
それもこれも、今日思い切り遅刻した分を休日返上で働けとのお達しが上の方から流れてきたらしい。
「雲雀に言えばなんとかなるんじゃねぇのか」
「まぁ、それは確かに何とかなるだろうけど、これ以上署長の胃を荒らしたくもないしねぇ・・・」
雲雀とは、綱吉に命令を下した署長よりも更に上の方に権力があるらしい謎の男である。綱吉がこんな似合わない職に就く事になった原因でもあるのだが。
「どうでもいいだろ今は。・・・夜は意外と短いもんだぞ?」
「あーもう、わかったよ。集中するから、三時間は寝かせて」
「まぁ考慮くらいはしてやろう。・・・おら、固まってんじゃねーぞコロネロ。・・・経験値ゼロってことでもねーんだろ?」
「・・・流石に馬鹿にすんじゃねーぞコラ」
かといって、本心から想う相手を抱くのはこれが初めてだ。いままでのどうでもいい相手とは話が違う。
リボーンに剥かれて衣服の乱れた綱吉が、ふと視線を上に上げる。
「・・・コロネロ」
上下逆さまではあるが、請われるように名前を呼ばれて、硬直しているほど初心でもない。大事にしたいとは思っているが、愛おしい相手だ。欲しくないはずがなかった。
「ツナ」
「んっ・・・ふ、ぅ・・・は、」
呼ばれるままに重なった唇はやはり信じられないほど甘く、柔らかくて熱い。がっつきそうになる若い身体を宥めながら、時折上がる艶やかな声をもっと聞きたくて、そろりと舌を割り込ませた。
ピリリリリ!
「ぁぅあ!」
「って!」
突然の着信音に驚いた綱吉が、思い切りコロネロの舌を噛んでしまった。一瞬ではあったので酷くはないが、口内に微かに残るのは、コロネロの血の味だろう。
「ごめんコロネロ!大丈夫か?」
「・・・、あぁ、問題ないぜ・・・」
軽く切れたとはいえ口内だ。すぐに塞がる傷だろう。あまり痛みはないが、男としてキスの合間に舌を噛まれるという自体はそれなりにきついものがある。小さな傷よりもっと違うところが酷く傷付いた。
「・・・痛ぇな」
「・・・わかるか」
「そりゃあな」
口を押さえたまま力なく項垂れるコロネロに焦る綱吉であったけれども、それよりもどうにかしろと目の前に差し出された携帯電話は、未だに呼び出し音を鳴らし続けている。ついでに両手首を縛るネクタイも解いて貰って、鳴り止まない携帯を開いてみれば、そこには名目上相棒である人物の名前が表示されていた。
「・・・こんな時間に、何かあったの?」
『やっほー起きてた?起きてたね沢田ちゃん!あのね、急いでるかと思って探してみたけど、当て嵌まりそうな女の子の捜索依頼は今のところ来てないみたいだよー?』
「・・・こんな時間にわざわざありがとう。夜勤担当で暇なのは分かるけど、せめて時間は考えてくれよ。メールにするとかさ」
『そんな冷たいこと言わないでよ!酷い!せっかく探してあげたのに!!たった二人きりのパートナーなのに!!!』
「・・・わかったよ、ありがとうロンシャン。役に立ったよ。じゃあ、お休み」
『あ、待って待って!沢田ちゃんって明日、休日返上で書類整理の予定だったよね?』
「ええと、まぁ・・・」
『さっきねぇ、警視正が別件頼みたいって探しに来てたよ。また追って連絡するからそこで待機、だって!』
「・・・・え」
警視正・・もとい雲雀はこの町において・・・いや、この国において、どのような立場なのかは未だ謎ではあるが、事実権力の塊だ。
綱吉を気に入ってくれているからこそ多少どころでない融通も利かせてくれるが、その代わり人使いも相当荒い。それこそ町中をひたすら走らなければならないような仕事も平気で指示される。
とりあえずおざなりながらも礼を言ってロンシャンとの通話は切ったが、綱吉はここでコホンとわざとらしい咳をしてみせた。
「・・・明日、ある意味楽だと思ってたんだよね。所詮書類整理だし。座ってればいいかなとかさ。だから・・・良いよって言ったんだけど」
二人の視線を受けるのが怖くて、綱吉は振り向けないまま訥々と話す。綱吉のことは勿論、リボーン、コロネロのことまで全て知っている雲雀をまた二人も良く知っているから、綱吉の態度にピンとくるものがあった。
「雲雀かコラ」
「刑事なんざとっとと辞めちまえって前から言ってるだろうが」
「そう簡単に辞められるものでもないんだよ・・・!」
綱吉の、真っ黒に染まるであろうこれからの経歴ではなく、孤児院に引き取られるまでの経歴を知る雲雀に、約束させられたことがある。
「この国に居たいなら、この仕事以外は認めてくれないそうだよ」
「だったら攫ってやる。いつかは向こうへ渡ることになるんだろ?時期が早まっただけじゃねえか」
「・・・そうだねえ」
ボンゴレ十代目を継ぐと決めた時から、いずれは・・・いや、もうすぐにでもイタリアに飛ばねばならないだろうとは考えていた。
今イタリア本部には、ドンの席に座る者は誰も居ない。先代の息子であるヴァリアーの長、ザンザスが仮にまとめているらしいが、今やボンゴレは徐々に傾いている途中なのだ。
綱吉がイタリアに渡ればすぐにでも十代目の座を継ぐことになるだろうが、それにもまた様々な問題が絡んでくる。
どうしても綱吉でなければならない理由は、二つ。
稀代の人物であったとされる初代ボンゴレボスの血を脈々と受け継いだ、沢田家の末席であること。また、逃げられない事実として、ボンゴレリングが次代を綱吉と定めているからだ。
一度でもその座に就き、リングが次代を選ぶまで、綱吉は生きているだけでボンゴレという組織に縛られることになる。
「・・・当たり前だけど、もう日本に戻ってくることも出来ないんだなって思うとさ・・・やっぱりね」
「それだけじゃねぇんだろ」
「・・・ん、」
そもそも、今ドン・ボンゴレが居ないという現実を作り出したのは、他でもない綱吉である。リボーンやコロネロたち『アルコバレーノ』の養父として生きていた九代目を殺したのは、綱吉であるのだから。
その事実は、『十代目候補・沢田綱吉』が日本で見付かったと同時に、あらゆるルートで知ってしまった幹部もいることだろう。その辺りの情報操作はアルコバレーノの一人であるスカルが請け負ってくれたのだが、どこにでも耳がある。人の口から漏れる情報を操作することは、幾らなんでもスカルにだって出来ることではない。
先代殺しの暗殺者が後を継ぐことを認めない連中はそれこそ掃いて捨てるほど居ることだろう。継承も無事に終わるとは言いがたい。
「・・・ま、それも一瞬のことだ。お前がボンゴレを継ぐなら、俺たちはお前に忠誠を誓おう。・・・一部厄介な奴も居るが、アルコバレーノが認めれば、幹部であろうが殆どの連中に口出しは出来ねえ」
「ザンザスはお前を待ってるって言ってんだろう?何も問題はねえはずだぜ、コラ」
「・・・うん。そのことはまたいずれ、ね。・・・で、今日なんだけど。ロンシャンからの電話通り、明日雲雀さんに何を頼まれるか分からないから、今日はこれ以上しないよ」
二人の熱が収まった頃を見計らって振り向く綱吉も、先ほどまでの色香は何処(いずこ)へか。よれたシャツを気だるそうに引っ掛けている疲れきったサラリーマンの風体である。
「・・・だろうと思ったぜ」
「・・・ったく、お膳立てしてやればいつも邪魔が入る。・・・相性、悪いんじゃねーか?」
すっかりやる気を削がれた二人は、溜息と軽口を吐き出した。
「とにかく、明日は雲雀なんだな。なら、俺も休んでおくぞ」
「・・・そうだね。雲雀さんの依頼なら、二人にもお願いするかもしれないし・・・もう夜中だし、寝ようか」
綱吉の言葉を合図にそれぞれの部屋へ戻るつもりであったリボーンとコロネロだが、お詫びもかねて甘やかしてやるから一緒にと誘われ、言葉のままに三人で床を共にする。
二人の体温に挟まれて心地良さそうな寝息を零す綱吉は別として、健康で若い身体を持て余している二人には、心地良い眠りなど程遠く、余計に疲れる羽目になったのだった。
◇◇◇◇◇
ちょっと長めでしたが・・・続きは買ってからのお楽しみv(笑)