A*H
存在理由2.5-raison d'etre-
RE-ZONDE-TORU 2.5
ジャンル:復活/リボコロツナ(パラレル)
発刊:2011年10月09日
仕様:B6コピー※R-15
頁数:52P
価格:¥500
設定がややこしいパラレル小説の短編集です。
サイト掲載中のバレンタイン話、あと書下ろしでコロ誕とリボ誕書いてみました。短編3本詰まってます。 いっつも殺伐してるからちょっと糖度を上げてみようと思ったらちょっとどころじゃなく甘くなったヨ!というわけで、表紙も甘ったるいのお願いしました。
「ソファーで三人がごろごろいちゃついてるヤツ」
「コロは口チューで先生は手首に噛みついて・・・指でもいいか」
まぁそんな感じで希望しまして(実際はもっと細かい指定です/笑)キタのがコレ。顔にやけるにやける。イイねリボコロツナ!!コロネロは精神的に、先生は肉体的にラブラブな関係です。いや、二人ともやることやってますけど。
短編集とか言いながら、次作の3に伏線張ってあったりなかったり・・・。(鬼)
▼以下おためし(超短文) ※前作のネタバレになります。OKな方のみどうぞー!
▼七月七日▲
「京子ちゃん、ハルちゃん、サイズは大丈夫かしら?」
「ええ、ばっちりですお母様!」
「うふふ。とーってもよく似合ってるよ、ツナ君」
「・・・・・・・・・・・・うん」
何がどうしてこうなったか、綱吉は女性陣に囲まれて実家の孤児院で浴衣を着せ付けられていた。いや、不用意に言ってしまった自身の言葉のせいであるということは、本人重々承知の上ではあるが。
「…これは、あんまりじゃないかな。なんで女物なわけ?」
数日前、近くの並盛神社でお祭りがあると知った綱吉が『そういえばお祭りなんて行ったことないかも。みんなで行けたら良いね』などとコロネロとリボーンに挟まれた状態で話した世間話からだ。
ムードが無いだの子ども扱いするなだの過熱した兄弟に色々と言えない目に合された綱吉は、気に入らなかったのかと考え直して、祭りのことはすっかり忘れていたのだ。しかし、突然職場に雲雀がやってきて「君、午後休だから。でも現地で合ったら容赦なくこき使うから覚悟しな」と訳の分からないことを言われて職場を放り出された。
席に戻ろうにも同僚に謝られながら入口を封鎖されてしまえばもうどうにもならず、とぼとぼと家路を歩いていた綱吉の姿はしかし、その次の曲がり角に辿り着く前に消えていた。身内に攫われる形で。
転異空間などと反則技を使うかつての飼い主・・・拾い主に強引に連れて来られたのは実家である沢田孤児院で、更に笑顔全開で待ち構えていた母親と幼馴染の女の子二人と(綱吉を攫った男の器である)少女に期待を込めた眼差しで見上げられれば、逃走する余地はなくなったのと同じことだろう。
結局抗う隙も与えられず風呂場に突っ込まれ、更に風呂場にまで突入かまされて喚いているうちにあれよあれよと着替えさせられ綱吉は今、着せ替え人形状態を受け入れているに過ぎないのだが。
「そもそも、こんな大きな浴衣誰の?まさか母さんのじゃないよね」
「あら、私のよ、つっくん。確か・・・空色から藍色に濃淡が付けてある生地に、ユリの花だったかしら?とっても素敵な浴衣でしょう?」
「・・・でも、母さんには大きすぎるだろ」
小柄な奈々の浴衣にしては綱吉が着つけ、きっちりおはしょりを入れても踝が隠れるほどの丈がある。純粋に疑問を感じて詳細を聞けば、これは門外顧問である父が相変わらずのドジを踏んで作った立派なオーダーメイド品らしい。
「着られないけど大切だもの。お直しするのも柄が切れてしまうからって躊躇っていたのだけれど、本当に取っておいて良かったわ」
ただ、息子の晴れ姿が見れないのは悲しいけれど、と白濁して濁ってしまった瞳で奈々は息子に告げる。女装の何が晴れ姿だと突っ込みを入れたくてむずむずするが、奈々がこんな風に言うのなら抵抗する気も失せるというものだ。
とりあえず着るだけ着せられて、歩き辛い裾裁きで苦労しながらリビングに辿り着くと、諸悪の根源である金と黒の悪魔がいた。
「よおツナ。馬子にも衣装ってやつだな。後はメイクか。こっち座れ」
「髪は俺が弄ってやる。動くんじゃねえぞコラ」
「・・・!・・・っ!!」
暴れたいけれども、女性陣の期待を込めた視線で見つめられる状況に丸め込まれて、普段は海外で活動している幼馴染たち談笑している中、一人晒し者のように身なりを整えられたのだった。
◇◇◇◇◇ 以下リボ誕◇◇◇◇◇
▼十月十三日▲
本当の親の存在を知って、初めて知ったこともあった。
今まで考えたこともなかった誕生日というものの存在だ。
孤児院にいる一人ひとりの誕生日を別けて祝えるほど裕福でもなかった孤児院は、おめでとうはその日に言って貰えても、お祝いパーティーは年末に纏めてクリスマスなどと一緒にやっていたのだ。
本当の誕生日が判らなかった綱吉(仮に院に入ったその日を誕生日としていた)も、勿論その時一緒に祝って貰っていたが、今年は朝から掛かってきた電話で、奈々から『明日のね、お誕生日おめでとう』という言葉を告げられたのだった。
「え、誕生日パーティー?」
『そうよ。この年でと思うでしょうけど、今までお祝い出来なかった分たくさんお祝いさせて欲しいの』
本当にこの年になって、だ。苦笑を浮かべた綱吉は起き抜けのままベッドに転がりながら、壁にかけてあるカレンダーを眺める。十月十四日は明日だが今夜から孤児院出身の幼馴染たちも顔を揃えるというので、今日から帰って来ないかとの誘いらしい。
眠気にぼんやりする頭でなんとか言葉を理解して、勿論と答えようとしたところで、掴んでいた携帯電話が忽然と姿を消した。
「もちろ・・・あ、あれ?」
「・・・悪いなママン、ツナは俺と用事があるんだ」
『あら?・・・リボーンちゃん?』
「あぁ、おはようだぞママン。明日の夜には必ず行くから、悪いな」
他にも二、三言、話したリボーンは、もう一度謝罪を述べてから電話を切り、綱吉に放り返した。ベッドの中の綱吉を見下ろすリボーンは既にブラックスーツに帽子まで粋に決め込んで、身支度は全て整えているようだ。まだ朝の六時半前。そろそろ起きなければならないのは分かっているが、無駄に元気なリボーンに付き合う気力はない。
鍛え方も違うが、何より若さも違うので。
「・・・なんで断ったの?それに、俺そんな予定聞いてないけど・・・」
ふあぁ・・・と、盛大なあくびを零しつつ、布団を剥いでもぞもぞと起き上がる。今年の夏は猛暑で残暑もきっと厳しいだろうと言われていた割に、寒くなるのは早かった。
「覚えてねえのか。言ったはずだぞ。一か月切った頃から自力で気付かせるためにあえて言わないようにしてやったが、まさか本気で忘れてやがるとは本当に鈍いな」
「なんのことだよ・・・俺、本当に記憶にな・・・っくしょん・・・!」
一つくしゃみをした綱吉に、肩をすくめたリボーンから室内用の上着を投げつけられる。コロネロならば肩にかけてくれる位はしてくれただろうが、目の前の相手ならば上着を取ってくれただけでも珍しい。
思わず外の天気を確かめてしまいたくなるほどの出来事にぼんやり見上げていると、目の前に差し出された小さな小瓶。たぷんと揺れる透明な液体に、綱吉の思考は徐々に寝ぼけたものから遠い夏の日の夜までしっかりと思い出すことができた。
「な、なんで、それ・・・!」
「今日は約束の九十八日目だ。あの日はコロネロに譲ってやったが、俺の誕生日なんだぞ。俺にもお前を独り占めさせろ」
猫科の大型動物に懐かれるように頬を撫でられ首筋を噛まれ、顔中にキスを貰うまで綱吉は寝ぼけたままの頭でされるがままだ。しかし、リボーンが綱吉の肩をぐ、と押しやったタイミングで漸く目が覚めたように抵抗して身を捩った。
「え?嘘だ。なんだよ今日って。俺の前日?・・・そんな珍しい偶然みたいなことなんて」
「ありえなくはねえな。お前の境遇はまさに『ありえない』のオンパレードだろうが。こんな小さな事実くらい認めろよ」
「や、でも・・・だってお前の日頃の行い見てると疑いたくもなるよ。もう、冗談は良いからどけよ。もう行く用意しなきゃ」
「どこにだ?」
「どこって・・・。だから、仕事だよ」
押し倒そうとしていたところを邪魔されたリボーンは、それよりも疑われたことが面白くなかったらしい。コロネロは、綱吉はいまだに過去犯した罪の重さを背負っていると思っているようだが、勿論忘れてはいないけれど実際そこまで深刻でもない。罪の意識から際限なしに甘えさせてくれるというわけでもないのだ。
コロネロ自身が綱吉に甘えないだけで、綱吉はそれを自分の判断で割り切って諦めるか受け入れるか突っぱねる。時には本気で抵抗されることもある。コロネロの命と記憶を人質に、あらゆる無体を強いてきたリボーンの言う事は、コロネロの言葉より、綱吉の耳に軽く届くというのも面白くない。
こういう時は昔のように無理矢理にでも抑え込んでめちゃくちゃにしてやりたくなる衝動が顔を出す。けれど。
「・・・折角のプランが台無しになるのは避けてぇからな。今は我慢してやる。仕方ねえからひとつ教えてやるが、お前は今日休みだ。だから無駄な抵抗はやめて俺に独占させろ」
「そんなめちゃくちゃな嘘、誰が・・・」
ピリリリリ。
朝の睡眠を邪魔された時と同じ音が、手の中の携帯から響いてくる。そろりと画面をのぞいても『非通知』の悲しい設定だが、なんとなく、掛かってきた相手が読めてしまった綱吉だ。
「・・・はい沢田です。おはようございますヒバリさん。え、今日休み?え。なんで明日も?取引ってなんのですか、あ、ちょっと!」
こんな朝早くから何が忙しいのか、綱吉には興味はありませんとばかりに電話は寂しくも切れてしまった。ツーツーとなる電子音を切って、ベッドに座ったままの体勢でリボーンを見上げれば、器用に片眉を上げたリボーンと目が合う。
「・・・わかったら、ここに居やがれ。今日は俺を甘やかす日だぞ」
「うわっぷ!」
隙もなくきっちりスーツを着込んでいたというのに、帽子を投げ飛ばして寝ぼけ眼の綱吉に飛び込んできたリボーンは、ぐりぐりと子供のように顔を押し付けて懐いてくる。意外と甘え上手のリボーンだけれど、こういう行動の裏にこそ警戒すべきだと分かっていて、それでも可愛らしい姿は父性(?)をここぞとばかりに刺激し、綱吉は思わずその背中と髪を抱きしめるように撫でてやった。
「・・・わかった。疑って悪かったよ。今日はリボーンの言う事を聞く。何よりもリボーンを優先してやる。それでいいか?」
結局は、いつも綱吉が折れるのだ。外堀さえ埋めてしまえば、綱吉にも抵抗する理由がなくなる。面倒下がりという理由もあるだろうが、綱吉にとってリボーンは、信用出来なくとも愛おしい生涯のパートナーであることには変わりない。勿論、それはリボーンが綱吉を手放さなさなければ、なのだけれども。
「よし。それなら早速準備だぞ。シャワー浴びて着替えて来い」
さっきまでの可愛らしさはどこへやら。さっさと立ち上がったリボーンは綱吉に下着を投げ、風呂へと押し込んでくれた。
言われるがままにシャワーを浴びて出ると、リビングには出来立ての朝食が並んでいる。普段用意してくれるのはコロネロなのだが、今日はまだ一度も顔を合わせてはいない。それに、これは。
「リボーン、お前が作ったの?コロネロは?」
「・・・さあな?今頃ヒバリにでもこき使われてんじゃねえか。冷めるから食うぞ」
このニヤリ加減は何かよからぬことをしでかした証だと、綱吉には分かっている。・・・というか気付いてしまった。
コロネロは恐らく綱吉の休みをもぎ取るために、スケープゴートとして雲雀へと差し出されたらしい。
帰ってきたら目いっぱい甘やかすと心に決めて、今日は目の前の王子…王様へ給仕することに専念する。
相変わらずコーヒーに関しては採点が厳し過ぎるリボーンであるが、ゆったりと美味しい朝食を満喫して、朝の時間は穏やかに過ぎていった。
最初だけを抜粋。ヨロシクです!