01:邂逅
「うわっ!」
「っ!」
何かに身体ごとぶつかった。
前も見ないで、本気で走ってたオレが悪いんだけど。
「・・・ぃたた・・。もー何で逃げるんだよー・・・・」
一度捕まえたひよこは、こっちが気を許したと同時に手の平から逃げてしまった。
慌てて追いかけて来たんだけど、ちっさい上に素早い動きのひよこだ。侮れない・・・!
・・・と、対抗心を燃やしてしまったが最後。この有様だ。
思いっきり滑り込んだから、肘とか擦り剥けてんだろうなー・・・あれ?
・・・勢い良く地面に転がったと思ったのに、そんなに痛くない。
肌に当たる地面が、凄く柔らかい気が・・・。
「・・・ちょっと。早く退いて欲しいんだけど」
と、下から声が聞こえて、慌てて目を開いた。
「・・・あ」
うわ・・・何これ?
「・・・聞いてる?」
オレってば思い切り押し倒す形で、それを下敷きにしていたらしい。
光に透ける髪は、綺麗な紫色。
黒曜石をはめ込んだみたいな、真っ黒の瞳。
氷で出来たような、色の薄い透けるような肌・・・。
思わず触ってしまいたくなったオレは、顔の横で地面に付いていた手を伸ばした。
「・・・っあ?」
その瞬間、その腕を握り返されたと思ったら、突然身体が浮いた感じがして、目が廻った。
次に襲ってきたのは、背中への強い衝撃。
反射的に受身を取って、反動を殺す為に何度か転がる。
「いきなり危ないなぁ!・・・って、え?」
今、オレの身体を投げたのは・・・。
「そっちからぶつかって来ておいて、謝りもしないどころか・・・何をしようとしたんだ?」
自業自得だ。
キッパリとそう言いきった声に、初めてぶつかったものが人だったのだとわかった。
ザァ・・と流れる風に、その人の色違いのバンダナがひらひらと揺れる。
「・・・!?」
さっきは逆光かなにかで見えなかったのか、彼は正面に座りこんだままのオレの顔を、驚いた顔で見つめてきた。
その顔も、はっとするくらい綺麗で。
「あ・・あの?」
「・・・・・」
オレに何かあるのかと、期待を込めて声をかけたけれど。
その時にはもうオレになんて興味は無くなったらしくて、視線を逸らされた。
「あ、ちょっと!」
去って行こうとするその背中を追いかけようと、慌てて立ち上がる。
「ごめん!あの、ごめんなさい・・・?」
思わず言葉を敬語に直してしまったほど。
多分、オレと年は同じぐらいだと思うんだけど・・・それにしては、漂う雰囲気が只者じゃない。
謝ったオレをちらりと振り返るだけで、その人は行ってしまった。
追いかけて行きたかったけれど・・・振り返った時の、彼の目が・・・・酷く冷たくて。
「おーいカナタ何処行ったー?!」
「あ・・・やば・・・っ!」
響くビクトールの声。
思わず、見つけたひよこを捕まえようと走り出したオレを追って来たのだろう。
結局、ひよこには逃げられてしまったけど。
怒られることを覚悟で、オレはそっちへ歩いていく。
「・・・あ!いたー!!」
「カナ〜・・・お前、脚早すぎ・・・」
「・・・いきなり走って行くなよ。誰もがお前みたいな体力バカじゃないんだぞ・・?」
ナナミの声に、フリックが溜息を零しながらそう言った。
その横でぐったりしてるのはシーナかな?
オレたちは今、シーナのお父さんが大統領をやってる国へ訪ね行く途中で、ココはラダトの街なんだけど。
道案内のシーナをほったらかしで走って行ったオレを、何とか追いかけて来てくれたらしい。
「あははごめん。でも、体力バカは酷いよ、うん」
まぁ、スタリオンと追いかけっこをしてついていけるのはオレぐらいって程には、自信があるけどね。
「で、目的のひよこはどうした?」
「あー・・・逃がしちゃったv」
「えぇ?!カナにも捕まえられなかったの?!」
どれだけ脚の速い動物だろうと、小さな頃から逃げられるヘマをした事はない。
それを知っているナナミだからこそ、目を大きく開いて驚いていた。
「それにしても。獲物を逃がしたにしては、嬉しそうな顔してるな?」
相変わらず、ビクトールの観察眼には驚かされる。
オレは、がしがしと乱暴に髪を撫でるビクトールの手に笑いながら、頷いた。
「まぁね。実際オレも驚いたけど・・・」
ひよこより、もっとイイものを見つけたからね。
⊂謝⊃
ついに書いちゃった3組目v(笑)
暗い話になるか、ギャグになってしまうのかはまだ不明ですが・・・
こんな風に短い話をこそこそと書いていきたいなーと思ってますv
なんで隠したかって・・・理由はただ一つ。坊主っぽくないから(笑)
あ、でも俺は坊主しか書く気ないですよ!!
もしかしたらリバ可するかも(ぇ)ですけど、苦手な方はコレ以降を見ないように!!(笑)
ではでは、こんな所でまでお付き合いありがとうございましたv
斎藤千夏 2004/05/23 up!