A*H

コピー本『Colors』の続きのような番外編のようなただの十年後設定のようなむく誕。 誕生日なのにやっぱりかわいそうなむくろさん。
スライディングでも間に合わなかったけど、骸さんはぴば!オメデトウ★(笑)

十年も経てば人は何処かしら変わるものだ。
ダメダメのダメツナが、気付けばイタリア全土で別格のボンゴレファミリー十代目としてマフィアなんてものをやっているのと同じで、クラスの中に居ても居なくても良かったような(居ない方が色々とマシだったような気もする・・・)影の薄い学生だった俺が今では毎日どこかで色んな人からプロポーズを受け取るハメになるとは。
思って無かったけれど。
「・・・骸サン、これなんですかね」
「婚姻届ですね。さ、ここに君の名前を書いて下さい。お義母様にもご了承頂いて来ましたから!」
親の同意はもう必要ない歳なんだけれど、書いてあるのは確かに見覚えのある母さんの直筆だ。
そもそも、男同士の結婚になんで疑問も持たずにサインなんかしてるんだ。
あ、でも何となくこの字見てたら会いたくなって来た。
そして話したいことが沢山ある。
まずはごめんね。多分きっと、孫の顔は見せてあげられない。
拝啓、遠い日本に住む沢田奈々様。
息子綱吉はただ今人生最高のモテ期が来ているようです。
・・・・ が、なぜだかどうして、絶賛『男』にモテまくっています。

 


*Colors 6/9*


 




俺は出張結果の報告書をくれと言ったはずだった。
けれど差し出した手の中に落ちてきたのは、なんか最近よく見かける気がする見覚えのある紙で。
「なぁ、骸。今回の出張先って確か南米とかそっち方面だったよな?」
「えぇ、そっちも問題なく完了してますからご安心を」
「・・・なんでわざわざ日本の婚姻届なんてものを持って来れるかって質問だったんだけど。南米から日本ってどんな寄り道だよ?逆周りだろ・・・」
そもそも、今回の出張は通常三ヶ月くらいはかかるような長期に渡る調査だったはずだ。それを一ヶ月の短期間でキッチリ終わらせて来たのには驚いたけれど、更に寄り道までする余裕は一体何処から捻り出したんだと頭をかしげる。
「・・・それ、あまり外ではやらないで下さいよ」
「は?何を?」
はっきり主語を言えとばかりに見上げれば、今度は目元を押さえて無駄にバランスの良い長身がくらりとよろめいた。
いっつも思うけど、こいつの中身は本当に大丈夫なんだろうか。
「あぁもういつもいつも君ときたら!誘ってるんですか!?ああいえどうせ無自覚なんでしょうけどね!!ですがあの忌々しいアルコバレーノのお陰で僕らの気持ちははっきりきっぱり気付いたはずです。僕が君を好きだと!愛してると!冗談なんかではないと君はもう知っているくせに!!」
「はいはい知ってますよー」
ちょっと前まで、気付いていたけれど気付かないフリをしてみんなの告白やそういうアピールをすべて無かったことにして聞き流していた俺だ。
だって十年も付き合いのある同級生とか先輩とか元敵とか教官とカテキョに猛烈アピールされてるなんて、普通は気付きたくない。・・・そもそも全員男だっての。正直、無かったことにしたかった。
だが、最強のお子様リボーン様の策略で兄弟子であるディーノさんを巻き込んでの暴露大会のようなゲームをやらされて、それぞれに真面目な想いを俺に向けてくれていると気付いて、もう無視しないと決めたのだ。
「知ってるくせに何ですかその態度!もうちょっとはにかんでみるとか照れてみるとかしてみたらどうですか!!そもそも、僕には君の態度が変わったとは思えないんですけれど」
「まーそうだろうねー。気付かないふりはしないって言ったけど、受け入れるとは言ってないよ俺」
ようやく出した本当の報告書をぺらぺらと捲りながら、適当に答えを返す。
それでも諦めずに退室しようとしない相手に、視線も向けないままおざなりに。
「うん、骸。はいありがとう。ご苦労様。戻っていいよ」
「・・・・君、本当に僕に対して酷いですよ色々と」
まぁ、確かに。
色々やらかすトップ2の骸だけれど、確かに俺のお仕置きは一番キツイだろう。・・・他の人にしたら普通に死ねるレベルだもん。
基本が氷詰めの刑だしな。・・・まぁそれは骸自身も悪いからなんだけど、手元の書類は俺の要望にきっちり応えてくれる結果を示しているし、今回は特別にご褒美でもあげるとするか。
「わかった。仕方ないから報酬とは別に何か一つ、骸の欲しいもの用意してあげるよ」
「そんなの勿論き「俺以外でね」・・・・」
先手を打った瞬間、骸の表情が歪にひきつった。
でも、それは仕方ないと思って欲しい。こんな俺を欲しいって言って来るのは骸だけじゃないから。
「俺が本当にその人を好きになるまで。それまでは、流されるように誰かのものにはなれないよ」
「・・・わかっていますけどね」
実際に俺より年上のはずで、そもそも輪廻とか転生だとか言っていることが本当ならこの中身の年齢はずっと上のはずで、そろそろ老人とか仙人並に人生を達観していてもいいだろうに、どうにもこの人は子供くさくて無碍に出来ない。
そう呆れたように言えば、真正面から直視し辛いほど整った顔が近づいてくる。
「僕が理解し、悟った世界をぶち壊したのは君だ」
「・・・・あぁ、そうだったっけ」
あれからどうやら、ちょくちょくと重ねる逢瀬の間に、俺に惚れたという骸。
っていうか、あんな風に自分で信じていた世界を壊されたら、普通は恨まれる方が多いと思うんだけど。
「なんでお前、俺を好きになんてなったの」
「さぁ?気付いた時にはもう欲しいものが君以外にありませんでしたから」
「・・・・お前・・・さらっと、なぁ・・・」
バカみたいに絡んでくる時はいい。簡単に弾き返せるけれど。
今みたいに素直にポロリと告白されると、正直弱い。照れる。
「・・・綱吉君、どうしました?顔、真っ赤ですよ?」
「あぁもう、うるさい!いいから俺はほっといて、俺以外で欲しいもの決めろよ!」
火照った顔を冷ますついでに、なくなってしまったコーヒーでも淹れようかと席を立つ。
どうせなら、骸の分まで淹れてやろうと少し親切心を出してみたところで、ふと目に入ったカレンダー。
「・・・あ」
慌てて時計を見てみるが、まだ辛うじて日付は変わっていない。
そもそもどうして骸がこんなに急いで出張から戻ってきたのか聞いていなかった。
いや、もう聞かなくてもきっとそういうことなんだ。だから戻って来てから休息もせず、速攻で執務室まで書類を届けに来たんだろう。
まったく、褒められたい子供かっての。思わず、笑いが零れてしまう。
「なぁ骸」
「何ですか。どうせ駄目って言うんでしょうけど僕が欲しいもの言っていいですか」
「まぁ取り合えず俺の方が先な」
正面に立っても、やっぱりかなり上にある綺麗な顔。
このままじゃどうしても届かないから、少し荒っぽい方法になるけど、首から垂れてる意味不明なネクタイを強く引く。
「っ、つなよ・・・」
何度か押し倒されたりイタズラされたりしてるから初めてじゃないけれど、『俺から』するのは初めてか。
軽く触れるだけの子供みたいなキス。
それでも、しっかり触れ合わせた感触は伝えたし、離れる間際に少しだけ形の良い唇を舐めてやった。
そのせいで離れる瞬間妙に可愛らしい音がしたけれど、まぁ、それもサービスってことで。
「どうせ名前と一緒で本物じゃないんだろうけど・・・とりあえず、誕生日おめでとう骸」
六道骸で六月九日ってまずありえない。
ありえないけど、そんな語呂合わせみたいな単純ものが好きな骸も、まぁ可愛いから許してやる。
その骸と言えば、俺にネクタイを引っ張られた体勢のまま、驚いたような顔で固まっていらっしゃる。
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・骸?」
「・・・・・・・・・・」
「・・・なんとか言えよ」
自分から仕掛けておいてだけど、黙られると余計に恥ずかしい。リアクションしろよ。
「綱吉君」
そんな俺の内心が伝わったのか、低く俺の名前を呟いたと思った途端視界がぐるりと回転した。
背中に当っているのはきっとソファ。天井が見えたと思ったら、そのまま骸の顔がドアップで近づいてきた。
「は?こらこらおいおい俺はそこまで許した覚えは無いよ!?」
「綱吉君つなよし君あぁもう我慢出来ませんなんてことしてくれたんですかこれで僕に禁欲しろってことですか?!」
「はぁ?何がどうなってそういう話になるんだよ?!」
近づいてくる顔を押しのけようと攻防していると、今度は口を諦めて首筋に顔を埋めてくる。
「もー!こんな堪らない匂いまでさせて!正直君と会った後の数週間は他の人と出来なくなるんですよ!!」
「知らないよそんなこと!」
っていうか、ドサクサ紛れてそんな床事情の説明なんてしなくていいから!
「そうですよ誕生日です。報酬の他にもう一つ何かくれるなら、やはり僕が欲しいのは君以外にありえない」
「・・・・誕生日プレゼントってこと?」
「そう取っていただいて結構。希望としては心も全て欲しいですが、一日限定ですから身体だけで我慢してあげます」
いやいや、それもどうなの。
女の子じゃないから、そこまで純潔だ貞操だとか気にしてるわけじゃないけど、したらしたでうるさいんだよな周りが・・・。
そうだよそもそも俺の方がこのモテまくり現象のせいで禁欲するハメになったんじゃないか。
骸は数週間って言ったけど、俺って正直いつ振りだろう。そもそも、自分でしたのも何時だったっけ?
・・・考えたらちょっと、男として体調的に大丈夫なのか不安になってきた。
だから正直、本当に欲しがってくれるならまぁイイかって気持ちは、何処かにあるような気もする。
だけど。
「・・・・・・本当に、それでいいの?身体だけって、それでお前は満足できる?」
手馴れた様子で俺のネクタイを解き、スーツを脱がせていた腕に触れて、綺麗なオッドアイを見上げる。
一瞬驚いたような顔をしてみせたけれど、その瞬間、困ったような表情を浮かべて骸は手を止めた。
「・・・・・・・いいえ」
俺の手をそのまま自分の頬に当てた骸は、でも、それでもと言葉を続けた。
「後からでも、必ず君の全てを戴きます。ですが、今は・・・今日は先払いで身体だけでも欲しいんです」
「先払いってお前な・・・そもそも、俺が誰を好きになるかなんてまだわからないってのに」
「いいえ、絶対君は僕を好きになる」
まったく、自信過剰だなあこいつも。
きっとこんなことを思っているのは骸だけじゃないんだろうけど、本当にこんな俺の何処がいいって言うんだろう。
「まぁ、でも・・・お前らしいか」
正直呆れている。けれど、絶対に諦めないってアピールされてしまったら、少しはほだされるってものだろう?
笑いながら骸の首に手を回してやるとそれだけで泣きそうな、嬉しそうな顔をされて、正直こっちが困ってしまう。
「綱吉く―・・・」
どぎゅん。
「・・・・あれ、なんだ今の音?」
銃声みたいな、でもちょっと情けない音が響いた。途端、バタリと俺の上に落ちてくる骸の身体。
「な、骸!?おい、どうした・・・」
「日付は変わったぞ。・・・そこまでだ」
「リボーン!」
硝煙を上げている拳銃を構えたまま、帽子の鍔を粋に上げてみせるのはすっかり美少年に成長しなおしたリボーン先生だ。
俺のことを狙っていますとはっきり宣言した物好きの一人でもあるけれど、正直他の誰より俺に近しいところにいるのは恐らくこいつなんだろう。
「寝室で待っていてやりゃ何時まで経っても戻って来ねぇから待ち草臥れて迎えに来てやったんだぞ」
「あぁうんありがと・・・って、骸!撃った?本気で撃ったのねぇコレ!」
「安心しろ。象も一滴でオチるただの麻酔銃だ」
「あぁなら安心・・・ってそれ人間に使って平気なのか?」
道理で普通の銃声に聞こえなかった。安心していいのか少々不安だが、この理不尽の塊であるリボーンにしては実弾じゃなかっただけ最大限の優しさなのかもしれない。
「これが人間の括りに入るのか?」
「・・・・うーん、まぁ否定しづらいけど、とにかく医療班は呼ばせてね」
完全にオチているらしい骸の下から這い出して、内線で医療班を呼ぶ。こんな時間だけど二十四時間体勢のボンゴレ医療班はすぐさま回収致します返答してくれた。
「・・・本当はさ、もっと早く出てくるかと思ってた」
「秒針が十二を過ぎるまで待ってやったろ・・・俺なりの祝いだぞ」
「・・・まぁ、それもどうなのかと思うけど」
本当を言えば、リボーンがこんなに長く俺と誰かの二人きりを許すはずがないんだ。
他の守護者の邪魔が入らなかったのも、リボーンがさりげなく執務室に誰も近づけ無いようにしていたんだろう。
それとも、他の面々も(日本に戻っているらしい雲雀さん以外は)多少骸に気を使ったのかもしれない。
「なんか、骸ってむちゃくちゃだけどさ。どうしても憎めないんだよなー」
「だからと言って流されやがったら殺す」
「どっちを?」
「それくらい自分で考えろよダメツナ」
結局は散々な誕生日になってしまったけれど、遅れてでも何かプレゼントを用意してあげるとしよう。
駆けつけてきた医療班と入れ替わりに執務室を後にしながら、俺はそんなことを考えていた。




Q.E.D.

 

 

⊂謝⊃

オチはリボツナ!(笑)ごめんね骸さん!
でも一応このツナは総受けです。ある意味節操の無いツナ。とりあえず総受けなんです!!
設定的にはコピー本『Colors』の番外編とか続きとかそんな感じなんですけど、中身は所謂十年後設定のマフィアなツナが守護者とか教官とか先生にモテてますっていうお話ですので、あえて注釈はいらないかと・・・え、駄目?(笑) (駄目ならば取り合えずこちらからさわりだけでもどうぞ→『Colors』)
ギャグになった瞬間に骸さんの扱いが酷くなる罠。でも好きです。所謂好きな子イジメです。(笑)
とにかくお誕生日オメデトウ!間に合わなくってゴメンなっさい!
需要は無いでしょうが、フリーにしときます。
・・・本当に勢いのみで書いたので、少しでも気に入って連れて帰ってもらえたら小躍りして喜びます♪

斎藤千夏* 2010/06/10 up!







 

 

 

 

 

 

 






後日、目を覚ました骸の病室にて。

 

「・・・やっぱり君の身体を手に入れるのは、君の心が手に入るまで我慢することにします」
「はぁ。どこでも押し倒して来てたやつが思い切ったね。それはまたどうして?」
「次はきっと死にますから」
「・・・あぁ・・・・どんまい・・・」

目が覚めたら半年過ぎてたとか、本気で命の不安を感じるよな。うん。
とりあえず目が覚めてよかったねと、慰めのキスをした所で、どこからか漂ってきた殺気に骸は一目散に霧になって逃げてしまったとだけ注釈しておこうと思う。



END★