A*H

RECO27 2010年バレンタインSSS!(・・・オフ本のネタバレかもしれませんスイマセン。オリキャラ居ますスイマセン)

*存在理由 -2月14日-*


「ふー!これで終わった!」
積み重なった書類をパンと叩いて、仕事の開放感に深く溜息を零す。
壁に掛けられた時計を見れば、もう日付も過ぎてしまっている時間だ。随分と遅くまで掛かってしまった書類整理に凝り固まった身体を伸ばしていると、横からそっと差し出されたコーヒーカップがふわりといい香りを運んでくる。
「あれ?これ・・・」
「お疲れ様、沢田くん。疲れたでしょう?」
刑事課の先輩である女性からそっと差し入れられたのは、淹れたてのコーヒーだった。二月の冷える深夜にはありがたい。湯気の立つカップを嬉しげに持ち上げて礼を言う。
「ありがとうございます!丁度喉が渇いてて・・・」
「あの!じゃ、じゃあ!これ、お茶請けにでもどうぞ!」
そう言って、女性刑事の後ろから出てきた数人の制服の女の子・・・交通課の婦警さん方が差し出したのは、可愛らしい紙袋に入った箱だった。勿論その箱にも可愛らしい包装紙が巻かれてあり、そこでようやく今日の日付を思い出す。
「13・・・っと、もう14日ですか。バレンタインデー?俺に?」
「はい!あの、沢田さんにはいつもお世話になっていますから」
「私たちの気持ちです!ぜひ食べてみてくださいね」
頭を使った書類仕事の後は、確かに糖分が欲しくなる。疲れている自分を自覚しつつ、嬉しそうに笑って綱吉はその紙袋を受け取った。
「開けてもいい?」
「どうぞどうぞ!あの、市販のもので、ごめんなさい・・・なんですけど」
開けてみれば、これもまた可愛らしいデコレーションされた一口サイズのチョコレートが並んでいる。漂う甘い香りに、綱吉は心から笑みを浮かべて彼女たちに振り返った。
「そんなことないよ。本当に嬉しい。ありがとう」
そんな綱吉に、きゃあ!と声を上げた彼女たちは、そそくさと逃げるように刑事課から出て行った。こんな遅くまで夜勤も可哀想だと思いつつも、元気だなぁとぼんやり考えつつ手の中のチョコレートを一つ頂く。
「・・・ン、甘」
甘いものは嫌いではない。寧ろ好きな方だとは思うが、自分から手を出すことも最近ではなくなった。
煙草とか酒も一緒で、嗜好品というものに対しての興味が薄れている自分に苦笑しつつ、久々のチョコレートを堪能していると、 コーヒーを淹れてくれた先輩刑事が苦笑を浮かべた顔で溜息を付いた。
「沢田くん、彼女とかいないの?」
「え?彼女は、居ませんけど・・・その」
「そろそろ君もいい歳なんだから、捜したらどうかしら。あの子たち、随分前から浮かれちゃって・・・あぁそうだわ」
思い出したように彼女自身の席へと戻ったと思えば、ついでのように持ってきた紙袋のなかに、これはまた沢山のカラフルな箱が入っていた。
「はい、どうぞ」
「え?・・・・まさか先輩も?っていうか、これ・・・全部俺にですか?」
他の男性刑事に配るものだと思いきや、苦笑した彼女はそのまま紙袋を綱吉の手に渡して言葉を続ける。
「今日夜勤じゃない子たちに頼まれたのよ。渡しておいて欲しいって。結果がこれ。人気者ね沢田くん」
「はぁ・・・」
似合わない職業に勤め始めて何年か経つが、今までのバレンタインデーにはこんなことはなかったように思える。貰ったとしても、男性全員にばら撒かれる10円チョコみたいなものばかりであったというのに、この状況の変化に首をかしげていれば、隣から伸びてきた手が、開けられていたチョコレートを一粒奪っていった。
「イタダキマス!沢田ちゃん」
「あ、こらロンシャン!」
問答無用で奪われたチョコレートはロンシャンの口の中に放り込まれて一瞬で消える。
それを見ていた先輩刑事に溜息を吐かれて、その時になってようやく幾つもの目が綱吉自身に向けられていることに気付いた。
じっとりとうらやむような視線は、先輩刑事がこの刑事課の女神様だからだろう。スタイル抜群で美人さんではあるが、生憎綱吉はあらゆる美形を見慣れているのであまり感動はなかったりするのだが。
「沢田ちゃーん罪作りなオトコよね〜。見てぇあの先輩達の目!今にも沢田ちゃんを殴りたいって顔してる」
「あはは・・・」
開けられたチョコレートを、先ほどよりは小さくなりつつもいただきながら、冷めないうちにコーヒーも飲み干す。
綱吉はもう帰るだけなのだ。別に夜勤担当でもなければ当番でもないのにこんな深夜まで仕事をしていた理由はひとつ、休みがちな綱吉への上司命令だから、である。
もう刑事なんて止めてしまえと周りが騒ぐ中、ずっとこの場所にしがみ付いてしまうのは少なからず綱吉にもこの仕事に愛着があるからだろうか。
それとも、昔の約束を破らないために、日本に居る限りはこの職に就いていなければならないと強迫観念があるのかは、綱吉自身にもわからないままであったが。
「ンーまいねこれ。もういっこもらってい?」
「駄目」
「えー!ケチ!沢田ちゃんモテモテだからって独り占めなんてズルイ!・・・コレくれた子達、交通課の子でしょ。仲良いの?」
問いかけられて、そういえばと思考を巡らせるが、あまり記憶にない。が、交通課の婦警さんといえば、外回り中にやたらと会うことも多ければ、言葉を交わすことも少なくないと気が付いた。
「まぁ、親しいってほどでもないけどね。話したりはするかな」
「コノコノ!モテオトコめ!」
「でも義理チョコだろ?ロンシャンこそ、本命の彼女からもらえるんじゃないの?」
途端に破顔したロンシャンに、綱吉は反射的にうえっとした顔を浮かべて、必死で手を振った。
「大丈夫、興味ないからうん。紹介しなくていいからな」
「何で何で??可愛いのに!!沢田ちゃんも一回見たらホレちゃうかもよ!?」
「うん大丈夫間に合ってる!じゃあ、俺帰るから!また明・・・」
貰った紙袋とコートを抱えて立ち上がった綱吉と当時に、刑事課の扉が慌しく開けられた。
緊急な事件でも入ったのかと、一瞬緊迫した空気が流れたが、飛び込んできたのがまた先ほどとは違う女性刑事で、その開口一番の声に誰もが一瞬ぽかんとした顔を浮かべる羽目になる。
「ちょっと!!聞いて聞いて!今、正面玄関のところで、すっごいカッコイイ外人が誰かを待ってたの!!」
「外人?・・・ちょっと、びっくりさせないでよね。何か事件の関係者とかじゃないの?」
「だったらこんな時間に来ないわよ!絶対、誰かを待ってるのよ!寒そうだったから中へどうぞって言ったんだけど、断られちゃってね。でも、その声もまた渋くってカッコよくって・・・!!」
「外人さん?あら、貴女英語話せたかしら?」
「・・・ほんの少しね。でも、キレイな日本語で断られたの。それで、まさかの金髪碧眼!長身で、体格も良くって、もうミラクルな男だったわ!!」
「・・・・」
綱吉の背中に冷たい汗が一筋流れる。 この界隈でそんな目立つ男が二人も居たら大騒ぎになっているだろう。
「・・・あのさ、沢田ちゃん。アレって・・・」
「えーと、じゃあねロンシャン!また明日!」
綱吉は逃げるように立ち上がってその場を後にする。綱吉の相棒であるロンシャンに面識があってもおかしくはないが、正面から挨拶をさせた覚えもない。・・・が、見た目がどうにも派手だから、一回見たら忘れないだろう。
まだ熱弁している彼女たちが訳知り顔のロンシャンの説明を聞くのは数秒後。確認のために正面玄関側の窓を大きく開いて様子を窺っていることも、綱吉は全く知らないことだった。

***


まさかももしやもなく、確実にその当人だろうとアタリをつけて正面玄関から飛び出せば、門のところに持たれかかっている同居人がこちらに顔を向けた。
「・・・コロネロぉ・・・迎えになんて来なくていいって言ってるだろ」
「今日は遅くなるって言ってただろうが。ここが平和ボケした日本でも夜は危ないぜコラ」
「あのねぇ、俺別に未成年の女の子とかそういうのじゃないよ?」
実際、齢25を過ぎた立派な成人男子のつもりだが、二十歳にもなっていない少年・・・青年を見上げてしまうのは、決して綱吉の背が低いからではない。相手が高いのだ。
これが種族の差かと思わせるほど、コロネロの体格は良い。何時もはカーキーのシャツやジーパンで気軽な格好をしているコロネロだが、流石に寒いのか短めのボアジャケットを身に着けていた。
「なんだ?俺が来るのはマズいのか?」
「一応さ、お前の元職業的には、ここ鬼門のはずだよな」
「所詮雲雀が居んだろうが」
「居るよ!確かにあの謎な権力持ってる人は居るけど!コロネロ・・・目立つからなぁ」
本気で叱ってしまっては、意外と打たれ弱いらしいコロネロは意気消沈してしまうだろう。どうにも甘くなってしまう自分に苦笑しながら、綱吉は不安そうなコロネロの頬に手を伸ばして首を振った。
「うーん・・・まぁいいか。迎えに来てくれてありがとな」
「・・・あぁ、お帰りツナ」
そのままお互いに頬を寄せ合って、挨拶のキスを両頬に贈りあう。そのまま離れようとした二人の影は、近所迷惑になるほどの大音量な悲鳴にもう一度身を寄せ合う羽目になってしまった。
この近辺に民家はないので大した苦情も来ないだろうが、騒音の原因が並盛警察署というのは場所的にもいただけない。
「ねー!言ったでしょ?あれ、沢田ちゃんのコレね!」
「えぇ!?沢田さん!そんな・・・!」
「って、何で!?沢田くーん!その人は誰!?関係は?!内藤君の言ったことって本当なのー?!」
先ほどまで同じ部屋にいた同僚の刑事たちに交じって、チョコレートを差し入れてくれた婦人警官までが顔を出している窓を、綱吉はコロネロから離れることも忘れて呆然と見上げていた。
「ツナ? 」
「あ・・・まさか、ロンシャン!?」
「アハハー!相変わらず仲イイよねぇ!じゃ、オツカレ沢田ちゃーん!バイバーイ!」
女性陣と、何となく気の毒そうな男性陣に挟まれているロンシャンは悪気などゼロの顔で綱吉へ両手を振っている。
綱吉は、相変わらず空気を読まない相棒に呆れたらいいのか怒ったらいいのかわからない感情をひとまず押し込めて、コロネロの手を掴んで走ることを選んだ。
「ツナ?なんだあれ」
「いいから!とにかく逃げるよ!」
あのままでは彼女たちも門の外まで出て来かねない。追いかけるように声が飛んで来るが、無視して暗闇の中へ走り込む。
ビルが立ち並ぶ街中ではあるが、時間が時間だ。ほとんどがシャッターを閉めて静まり返り、人気もない路地を走っていると、コロネロがもういいだろうと手を引いたことで綱吉の脚がようやく止まる。
「はぁ・・・もう、ロンシャン明日覚えてろよ・・・」
「ツナ、悪かった。何か迷惑かけたみたいだなコラ」
「あぁうーん・・・迷惑っていうか、誤解って言うか誤解じゃないって言うか・・・」
コロネロと綱吉と・・・リボーンの関係を説明するのは少し難しい。仇であり恩人であり恋敵であって恋人であって家族で、尚且つ未来の主従となる関係・・・とでも言えばいいのだろうか。
それでも確かに相手に向ける気持ちはあるし、お互いに失えない存在だと知っている。心も身体も寄せ合った愛おしい相手だ。それはもう一人の同居人であるリボーンも含めてのことだけれど、二人を好きだという気持ちは揺らがない。
「いいんだ、もう。コロネロがそんな顔する必要はないよ」
「・・・だがな」
「気にするなってもう。・・・それより、コロネロは『ただ』お迎えだけに来てくれただけ、なの?」
訳知り顔でにやりと笑う綱吉は、全てに気付いている顔でコロネロの瞳を覗き込む。年上のはずだが、こんな時自分よりも随分と年下の子供に見えて、コロネロは寒さに震える綱吉の唇から目が離せないまま、ポツリと言葉を漏らした。
「今日は・・・その、だな」
「なぁに?」
「・・・くっそ!わかってんだろうが!これ!やるぜコラ・・・!!」
走っている最中にも散ってしまわないか気が気ではなかったのだが、何とか無事キレイな花びらを残したままの小さな花束を綱吉の前に差し出した。
渡されたのは、小さな薔薇の花束。 ブーケほどの、ほんの数本の可愛らしい薔薇の花束が、綱吉の視線を赤く染めた。
「・・・・真っ赤な薔薇って・・・キザだなぁコロネロ・・・」
「・・・るせぇぞコラ。なんだよ嬉しくねぇのか?」
日本では女の子からチョコレートが当たり前のバレンタインだけれど、諸外国・・・イタリアではそうでもなかったかと、綱吉はその薔薇を受け取った。
「ありがとう、コロネロ・・・すっごく嬉しい」
「・・・・おう」
ふいっと逸らされたコロネロの顔は耳まで赤い。薔薇よりも真っ赤なその初心さに思わず嬉しくなって、綱吉は小さな笑いが止められなくなる。
コロネロの姿を見てきゃあきゃあ騒いでた女性陣たち。このコロネロが彼女たちより・・・どころか、綱吉よりももっと年下だということにどれだけ気付いているのやら。
「なに笑ってやがる・・・」
「コロネロ、本当に可愛いなぁお前・・・!」
「って!なんだとコラ?!って、オイツナ・・・?」
飛びつく様にぎゅうと抱きついた綱吉に、恐る恐る手を回して抱きしめようとしたコロネロは、視界にちらついたものに気付いた瞬間、ツナを腕に抱き上げてその場所から飛び退った。
「ッ!」
「なに、・・・銃声?!」
地面にめり込んだ銃弾は、ツナが持っていた紙袋を打ち抜いて、中に入っていた色とりどりのチョコレートをばら撒いた。それに気にせず走り出したコロネロは綱吉を抱えたまま、素早く射撃の死角へと滑り込む。
「あ!ちょっと待ってあのチョコは」
「待てるか!狙撃されてんだぞ!?」
弾が飛んできた方向と角度を見れば撃ってきた方向はわかる。建物の壁に背中をつけて様子を窺うが、からかうように兆弾した弾が二人へと飛んで来て、またもその場所から逃げ出すように走るしかない。
チュンチュンと連射される弾は確実にツナを狙っている。狙撃用のライフルにサイレンサーは付けられないというのに僅かな音が、しかも遅れて聞こえるということは、どれだけ遠くから狙われているのかもわかならない。
しかもそれを連射できないスナイパーライフルで行う腕前はもはや人間業ではないだろう。
「・・っ!」
「ツナ!?」
頬や腕、脚を掠る弾は致命傷こそないものの、時間が経てば経つほど綱吉の白い肌から垂れる血の筋が増えていく。
「くっそ!!卑怯じゃねえか!出てきやがれコラァ?!」
「あ、バカ!コロネロ・・・!」
辺りを見回すことを集中していたコロネロは、唐突に矛先を綱吉からコロネロに切り替えた弾に反応できず、危なく喰らうところであったが、またも綱吉に庇われ、押し倒されるように暗闇へ倒れ込んだ。
「・・・ツ、ナ?」
「・・・もう、あいつったら。・・・ちょっとオイタが過ぎるみたいだね」
暗闇の中で、怒りの炎を宿した綱吉の目は普段の甘い紅茶色から透明に輝く蜂蜜色へと変化する。
ぼんやりとしたいつもの綱吉はここにはいない。飲み込まれそうな迫力は、綱吉が確かにボンゴレの血族で、ただ一人の後継者と証明するものだ。
倒れたコロネロの上に乗りかかったままの綱吉は、呆然と、驚きのまま目を見開いていたコロネロの唇に軽く自分の唇を重ね合わせて、微笑む。可愛らしい音まで立てて離れていくぬくもりをぼんやりと追いかけていると、目の前に、コロネロが渡した花束が差し出された。
「・・・ツナ?」
「・・・大丈夫、直ぐ戻る。少し預かっててくれ」
辺りを照らすほど大きくなった炎はふわりと綱吉の身体を宙に浮かせ、そのまま狙撃の居るだろう場所へ飛び去って行ってしまった。
本当ならば止めるべきだろう。が、綱吉の先ほどの言葉で、狙撃しているのが誰か良く理解したので、コロネロも溜息を零すしかない。
肉弾戦なら負けることなどそうそうないが、遠く離れたスナイパー相手に戦う術を今のコロネロは持たなかった。
戦場でならいざ知らず、銃もろくに使えない日本の町中でコロネロが出来ることなどほんの少ししかない。
「・・・役に立たねぇな・・・クソ・・・!」
「その通りだぞコロネロ」
「もう、黙ってろよリボーン!てか、いい加減に放せって!」
いつの間にか、側にはスナイパーを抱えた綱吉が戻ってきていた。いや、正確にはスナイパーに捕らえられて、が正しいか。両手を噴射口の変わりに使う綱吉に運んで貰うなら自分から抱きつくしか方法はないが、抱き込まれた綱吉が幾らもがいてもその黒いスーツに包まれた腕は外れないらしい。
「相変わらずダメツナだな。逃走の邪魔になるようなものは真っ先に捨てろと教えたはずだぞ?」
「だからって!花束ばっかり狙うなよ性格悪いな相変わらず!!」
どうやら綱吉は銃弾から逃げ回りつつも、コロネロから受け取った花束をずっと守っていたらしい。
嬉しいような、悔しいような物凄く複雑な顔をしたコロネロだが、綱吉の肌に走る赤い線を指で拭いつつ苦笑する。
「・・・嬉しいが、ツナ。俺はお前の方が大事だ。次にこんな状況が来た時は捨てて逃げろ。・・・俺からも言っておくぜコラ」
「・・・わかったよ。もう、早く帰るよ二人とも。始まったばっかりだって言うのに散々なバレンタインデーだ・・・!」
途中、リボーンにねちねちと文句を言われつつもばら撒いてしまったままのチョコレートを回収し、家に戻ったところで綱吉は再び深い溜息を吐くことになる。
「なんだよコレ!?リボーン!お前かー!お前だな!?」
帰宅して、とにかくシャワーとさっぱりしたは良いが、着替えを忘れた綱吉が裸にタオルのままでリビングに飛び込んできた。
「俺からの気持ちだぞ、受け取れ。・・・なんだ?その格好は早速のお返しか?いいだろう受け取ってやるからほら、来いよ」
「バカリボーン!あんなに沢山どうするんだよ!限度ってものがあるだろ!?」
「使い道は色々あるぞ?ベッドに敷き詰めてヤるのもいいもんだ。それか・・・あとは風呂か?」
「誰がやるか!!もう!コロネロちょっと手伝って」
「お、おう」
部屋いっぱいに敷き詰められたような薔薇をとにかく空き部屋へと移している途中で、着替えることをすっかり忘れていた綱吉がくしゃみを連発した。
「そんな格好のままでいるからだろ。・・・ツナ、用意してやったからもう一度風呂入ってこい」
「リボーン・・・」
恨みがましい目で睨んでも、気にもしていない表情で近寄ってくるリボーンは、コロネロより更に年下のはずなのだが。
「今度は傷の手当ても兼ねて身体中洗ってやる・・・なぁ、綱吉?」
「・・・っ、」
耳元に吹き込まれた低音は、どう考えても少年のものではない。肌を粟立たせるようなゾクリとした刺激が思わず身体を震わせて、裸の肌を撫でていたリボーンにもその振動は伝わったはずだ。
「待て。・・・俺も入るぞコラ 」
「っちょ!別に、俺一緒に入るとか、何も・・・!」
「暴れんな黙って洗われてろ。・・・贅沢な時間を存分に、味合わせてやるからな」
「いらないよ!欲しくないってもうリボッ・・・っん、ぅう・・・!」
結局、二人に連れ込まれてしまった風呂場には、いつの間にか大量の薔薇の花びらが浮かんだ浴槽が待ち構えていたり、のぼぜる一歩手前で息も絶え絶えに寝室へと逃げ込めば、またも真っ赤な花びらの散らされたベッドの上で・・・それこそ朝日が傾くまで・・・散々啼かされてしまった。
・・・・そんな14日の翌日。


「酷い顔色だね。・・・相変わらずかいあの二人は」
「・・・ノーコメントです」
掠れた声とぐったりした絆創膏だらけの綱吉に、職場の女性人たちがコロネロと、彼を巡った彼女とのトラブルに巻き込まれて大惨事!なんて大騒ぎしてたり、一昨日の深夜に何か大きな破裂音が何回もしたなんて通報や、火の玉を見たとか、空を飛ぶ人間がいたとか、そんな眉唾な噂までが飛び交う賑わいを見せていた。
「・・・・銃声に、火の玉に、空を飛ぶ人間。今では確かめようの無い通報だけど、綱吉は信じる?」
「・・・ノーコメントです」
「それで、バレンタインは有意義に過ごせたのかい?」
「・・・ノーコメントですってば!」
顔を真っ赤にして激昂した綱吉と珍しく刑事課へと顔を覘かせていた雲雀が我慢出来ずに爆笑する姿を恐怖に怯える視線で眺めて、あの日の事実確認をしようと待ち構えていた同僚達は結局何も言えず、結論的には並盛警察にはまた平和な日々が戻って来るのだろう。
その中央で綱吉は大きな大きな溜息を吐きながらも、愛おしい誰かを思い出すような柔らかい笑顔をひとつ、零した。





END☆

⊂謝⊃

はいどうもー!お付き合いアリガトでやんした。
2010年2月14日!今回こそ当日にアップできたよばんざーい!!
それも他の原稿書いてる途中に脱線してこっち書き上げちゃったよワーオ!
もしかしたら本編の存在理由の雰囲気とは物凄く違う感じになったような気がしないでもないんですが、正月SSを書き逃したので彼らにバレンタインディで暴れていただきました。
なんつーかな。もうちょっとバトルシーンとか書けるようになりたいんだよな。常々思っていますが苦手なんですバトルシーン。それなのに・・・そんなジャンルにばっかり嵌るのよね俺。(涙)
はい、SSS気分の書きなぐりなのでえち本番なくてスイマセン!えろいのももっと書けるようになりたいんだよ・・・切実にね。
っていうかオフで出してる話じゃわからねーよってそうですよねー。
大体なあらすじ、本編が気になっちゃった方はこちら(1)とかこちら(2)より、ご覧下さいましv


ハイ、なにやらテンションがおかしいですね。ここらで締めます。
今年も、今日のこの日にどこかで恋の花が咲きますよう☆(笑)


斎藤千夏* 2011/02/14  up!